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地域を結ぶ病院だより

vol.75(2024年7月)


フレンディーだよりvol.75(2024年7月発行)
  • 地域の力で糖尿病を乗り越えたい
  • 呼吸器外科での肺癌治療
  • 地域連携室からのお知らせ


地域の力で糖尿病を乗り越えたい

糖尿病・内分泌内科 部長
毛利 研祐

はじめまして。2024 年4 月より黒部市民病院の糖尿病・内分泌内科の部長を拝命いたしました、毛利研祐(もうりけんすけ)と申します。このたび、「これからの糖尿病診療について」をテーマに座談会を開催しました。本記事では、その座談会の模様をお届けいたします。
座談会には、糖尿病療養指導士として活躍する看護師の開(ひらき)さんと、私、毛利が参加しました。私たちは、糖尿病診療の現状や今後の展望、そして地域医療連携の重要性について意見を交わしました。
私たちが目指すのは、地域全体で糖尿病患者さんを支えるネットワークの構築です。地域の医療機関や関連施設、そして患者さん自身が一体となって取り組むことで、より良い医療環境を作り上げることができると考えています。
座談会の内容を通じて、皆様にも糖尿病診療の未来について考えていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
糖尿病診療は難しい?
開/患者さんに「痛いです」とか「苦しいです」という症状があまりないから「今は大丈夫かな」って思ったりして、病院を受診する意欲やタイミングが難しいですよね。
毛利/そうですね。医者側でいうと「HbA1c が6.8%だから別にいいわ」って、合併症検査やコレステロール・血圧の管理を適切に行っていないという問題もあったりします。
開/みんな考え方も違いますし。1 回受診してもなかなか継続して通院できなかったり。
毛利/確かに、患者さんも医療者も、程度は様々ですが、考え方や意識が違っているということはありますね。例えば2 型糖尿病の患者さんの場合、まず病態のバリエーションが一人一人異なっていて、さらに患者さんの治療意識も千差万別で、というところに加えて医療者の考えも色々ある、となるとこれが一筋縄ではいかないというのは当然な気がします。
糖尿病診療は今後どうなっていくと良いと思いますか?
開/透析・失明、心筋梗塞などの、深刻な合併症にならないような診療をしていけるといいですね。
毛利/それが一番大切ですね。合併症を防ぐ、あるいは遅らせることによって、糖尿病を持つ方が糖尿病を持たない方と同じような人生を送ることができるようになるのが理想ですね。
開/そうすると、やっぱり合併症検査が大事ですね。網膜症とか、歯周病とか。
毛利/糖尿病診療では、眼科の先生方や歯科の先生にしかできないことがいくつもあるので、そういった先生方との連携もすすめていきたいですね。
開/紹介先の先生に望んでいることはありますか?
毛利/外来をしていると、患者さんのHbA1cがちょっと上がってきて、体重がちょっと増えてきて、ALT なんかも少し上がってきたりして「あ、このままでいると血糖悪化するな」ってタイミングがありますよね。そこで、そっと会話に食事の注意点を差し込んだり、患者さんに嫌な思いをさせずに栄養指導に行ってもらったり、薬以外の手段で色々工夫して血糖コントロールを維持する、というのが糖尿病をみる医者の重要な仕事だと思っています。
逆にこれは、糖尿病だけをやっている若い勤務医にはなかなかできなくて、地域で信頼されている先生だからこそ出来ることでもあるので「外来での、患者さんに応じた簡単な指導」というのをやっていただけると嬉しいですね。
眼科・歯科との連携
毛利/以前いた地域の病院で、眼科の開業の先生に「患者さんが多くて忙しいので、あまり紹介しないでほしい」というようなことを言われたことがあって(笑)
開/黒部ではそういうことはないと思います(笑)眼科の先生から糖尿病患者さんの紹介を頂くこともありますし。
毛利/歯科の先生との連携は、上手くやっている地域は少ないですが、黒部はどうでしょう。
開/連携はまだこれからですね。
毛利/島根県の松江地域や滋賀県の甲賀地域では、歯科連携を運用しているそうなので、そういった地域の先生方の意見を参考にしながら、黒部でも歯科連携をすすめて行きたいと考えています。新川地域の医療者みんなで、地域の糖尿病を持つ方をみる、という形をつくりたいですね。
尿中アルブミン検査
毛利/新川地域は尿中アルブミン検査の検査件数が非常に少ないと聞きましたが……
開/そうですね。やっぱり腎症を評価する指標としてはとても重要なので、もっと検査が増えるといいと思っています。
毛利/尿中アルブミンは正直ですね。そのままにしているとやはり尿蛋白になり、腎障害が起こり、と進行してきます。最近では尿中アルブミン量を減らしたり、腎機能の低下を遅らせたりする薬剤も出てきていますが、誰にでも使えばいいというものでもなく値段の問題などもあるので、尿中アルブミンを測定して、適切な患者さんに適切なタイミングで投与するのが大切ですね。
栄養“指導”?
開/栄養“ 指導” って言い方はあまり好きじゃないですね。
毛利/僕も指導って、なんだか上からというか、一緒にやろうという感じじゃないというか、患者さんからするとちょっと嫌でしょうね。会話では「栄養士の先生に、栄養の“ 相談” しにいきませんか?」と言ったりしますね。
開/教育入院という言葉も、もう糖尿病パスでは使ってないんですけど、つい言っちゃいますね。
毛利/わかります。せっかく時間を作って病院に来てくれているんだから、なるべく患者さんに嫌な思いはしてほしくないですね。
私たちは、地域のかかりつけ医の先生方と連携し、患者さんと一体となって糖尿病診療に取り組んでいきたいと考えています。今後ともご理解、ご支援よろしくお願いいたします。

呼吸器外科での肺癌治療

呼吸器外科 医長
嶋田 喜文

最近の肺癌の外科治療は、様々な臨床研究の結果をもとに大きく変遷しており、当科でも腫瘍の特徴や患者さんの全身状態を考慮して最適な治療を提供するよう努めています。
ステージⅠの肺癌に関しては、これまでの標準術式は肺葉切除でしたが、画像技術の進歩によって腫瘍の病理学的な悪性度を推測できるようになったことで、区域切除を適応する機会が増加しています。区域切除は肺葉切除に比べて切除する肺の容積が少ないため、心肺機能を温存できるメリットがあります。区域切除の手術は、より細かな肺血管や気管支の処理が必要ですが、様々な内視鏡手術器具を用いることで、小さな傷で複雑な術式を施行することも可能です。高齢化や重篤な併存疾患のある患者さんも増加している中で、肺癌の悪性度と患者さんの身体機能を考慮して術式選択をしています。
ステージⅡやⅢの肺癌に対しては、周術期に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬剤を使用できるようになり、再発率のみならず予後も大きく改善しています。胸腔鏡下手術でも、精度の高いリンパ節郭清は可能ですが、肺血管や気管支の処理や隣接臓器の合併切除が必要と判断した場合には、開胸手術を選択しています。
また、当科でも消化器外科や泌尿器科と時期を同じくして、2023 年9 月より手術支援ロボット(daVinci システム)を使用した肺癌手術を開始しています。da Vinci システムを用いた手術では、3 次元モニター視野のもと、多関節かつ細径器具で手術できるため、より精緻な手術操作が可能です。さらには、通常助手が行うスコープ操作や臓器を展開する操作を、術者が4 本のアームを使いながら手術できるという点で、より術者の意図を術野に反映させることも可能になります。
癌治療は患者さんの日常生活に大きく関わることから、近くの医療機関で適切な治療を受けられるメリットは大きいと考えますので、お気軽にご相談いただければ幸いです。

地域連携室からのお知らせ

夏至の候、各医療機関の皆様方におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
この度当院におけるアミロイドPET 検査実施の承認を得ることができました。これを受け、2024 年6 月3 日(月)から「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症」に対する「進行抑制」を目的としたレカネマブ (レケンビ®)による治療が可能となりましたのでお知らせいたします。
つきましては、レカネマブ投与対象となりうる患者さんを紹介いただく際は、脳神経内科(毎週木曜日のもの忘れ外来)もしくは精神科までお願いいたします。
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