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診療科・部門

膝前十字靭帯損傷


前十字靭帯は、膝の中にある4つの靭帯のうちの1つですが、一旦損傷し断裂してしまったり、ゆるんだりした場合、他の靭帯に比べて治りにくいという特徴を持っています。

当地では、スキーが盛んであるため、捻挫により多くの方々が前十字靭帯を受傷され、治療に当たってきました。最近では、サッカー、バレーボール選手などが訪れています。
他の靭帯の多くは「切れたところを縫って、ギプスをしばらく巻く」という治療法をとるのですが、この靭帯はこのような方法で治るのは限られた場合だけです。

放置するとどうなるの

この靭帯が損傷していると、膝の前後・回旋で不安定性が残ります。通常の歩行や生活では困ることは少ないですが、不意に振り向いたり、足をつまずいたり、ボールをける、ジャンプの後の着地、スキーのターンなどの動作で、亜脱臼感を自覚します。
このような動作を繰り返すと、膝の内部にある半月板や軟骨が痛み、骨の変形をきたすこともあります。30才代以下の方、スポーツを定期的に行う方は、この状態を放置するのは良くないでしょう。

前十字靭帯が損傷した膝。
下の骨(けい骨)が大きく前へ引き出されてしまう

治療方法

① 放置 中高齢以上で運動を全くしない方は、そのままでも良いかもしれませんが、脱臼感、不安定感を繰り返すような場合には、そのたびに軟骨を傷付けていることになるので、充分な経過観察が必要でしょう。
② 装具療法 手術をせずに、特別な装具を装着してリハビリを行うことで靭帯が修復する場合があります。但し、「靭帯の損傷の部位が上端のみであること」「受傷後すぐに装具を装着すること」「治療期間中の角度制限などをきちんと守ること」など、種々の制約があり、これを充分守っても修復が得られない場合も少なくありません。
③ 手術 体のほかの部分から代わりになる腱を採取し、前十字靭帯の場所に植え込む「靭帯再建」手術が行われます。

膝前十字靭帯再建の手術法

  • 前十字靭帯が付いていた上下の各骨(けい骨、大腿骨)にトンネルを掘り、そこに前十字靭帯の代わりとなるように採取してきた腱を張り、上下を固定します。
  • 長年の研究により、どの部分にトンネルを掘れば最も良いかがわかっています。
  • 「体のどの部分から靭帯の代わりになる腱をもらってくるか」「どのように固定するか」によって、いくつかの方法があります。
  • 当院では、「損傷している部分の状況」「患者の活動性と希望」を考慮して、以下の方法を使い分けています。

手術適応

当院では、前方不安定性の存在に加えて以下の所見があるものを再建対象にしています。
  1. MRI上明らかな前十字靭帯損傷がある。もしくは、画像上不明瞭な所見でも理学所見にてピボットシフトテスト(回旋不安定性)が陽性である。
  2. 40歳未満。もしくはそれ以上でも、スポーツ・労作業の活動による膝負担が高いと判断されるもの。
  3. 術後リハビリテーションプログラムの遵守と定期診察が可能であるもの。
  4. 受傷後4週を経て屈曲が120度以上可能なもの

手術方法

以下の3つの方法を提示しています。
当院ではこれまでBTB法、ST法を活動性に応じて選択してきましたが、2003年度の治療ガイドラインでは基本的にはST法を推奨しています。これは、他の方法に比べて本法による成績の安定性が全国的にも確認されてきた事、手術手技、および固定材料の開発が進んだ事によります。
なお、手術では半月板損傷の手術も同時に行えます。
1. 膝蓋腱を用いる方法(BTB法)
膝のお皿の下にある幅3㎝程の腱の中央部約8mmを短冊状に採取して、前十字靭帯の位置に移行する方法。固定にはスクリューを使用する
利点
  • 骨を腱と共に採取し固定するため、初期固定力が強い。
  • 身体に残す人工物は少ない。
欠点
  • 腱や骨を採取する膝前方の痛みが残存する可能性がある(特に女性で多い)。
  • 術後の疼痛が他の方法に比べて大きい
  • 膝伸展力(キック力)が低下する
  • 再建靭帯は扁平化している
2. 半腱様筋腱を用いる方法(ST法)
膝の内側後方にあるひも状の腱を採取して、4重おりにして太くしたものを、前十字靭帯の位置に移行する方法。骨への固定には、人工の腱か糸と固定用のスクリューを使用する。
1本の太い靭帯を再建する「1ルート法」と2本の靭帯で再建する「2ルート法」があります。
利点
  • 手術後の採取部分の痛みが少ない。
  • 手術の傷が極めて小さい。
  • 手術後の筋力の低下が少ない。
欠点
  • 骨の中だけであるが、人工靭帯を一部使用する(現在のところこの悪影響は報告されていない)。
  • 可動域訓練の開始はBTB法より遅い。
3. 半腱様筋腱を用いる方法(ボーンマルチスクリュー法)
膝の内側後方にあるひも状の腱を採取して、2重おりにしたものを、前十字靭帯の位置に移行する方法。骨への固定には、大きな特殊スクリューを大腿骨および脛骨に使用する。
利点
  • 手術後の運動復帰が早いとされている
  • 人工靭帯は使用しない
欠点
  • 「2ルート法」は行えない
  • BTB法、ST法にくらべて非常に大きなスクリューが骨の中に残る(BTB法、ST法では固定金属材料の抜去が可能であるが、この方法で用いる材料は抜去不可)
  • 新しい方法のため長期の成績に関しては現時点で不明である
これ以外にも、関節内に人工腱を使用する方法(運動復帰が早い)があります。かつていくつかの人工腱でトラブルが報告された事もあり、当院では採用していません。しかしこの方法にも利点はあり、ご希望の方はご相談に応じ、紹介などを行います。

手術後の経過

リハビリ

入院中の経過はクリニカルパスに記されています。
当院ではこれまでの治療成績の分析から手術後は以下のような予定でリハビリを行います。
手術後は、翌日から膝装具をつけて、2本松葉杖で移動できます。 術後1週間で体重をかける訓練を開始し、術後約3週間で曲げ伸ばし訓練、杖なしで歩けるようになり、運転などは可能となります。
退院は抜糸以降いつでも可能です。術後2ヶ月までは週1~2回のリハビリ通院が望ましいですが、遠方の方は、近くの病院やスポーツジムと連絡を取ってリハビリプログラムを進める事も出来ます。
術後3~4ヶ月でジョギング開始。約6~8ヶ月で各競技の練習へ復帰します。
当院では、「リハビリセンター」での通常のリハビリメニューと併せて、「臨床スポーツ指導室」にて、病院スポーツトレーナーにより各競技に合わせた全身トレーニングを併用しています。 これにより国体選手など多くの方が、リハビリ治療中でも、体全体の筋力、運動能力を保持しつつ短期間の復帰をめざしています。
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