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【研修医】メーコン黒部医療交流

鈴木 駿輔医師


米国研修体験記

 2024年11月、ジョージア州はメーコンにある、Atrium Health Navicentにて4週間研修をさせて頂きました。今年は交流開始から20周年記念というお祝いの年にあたり、この11月にセレモニーが行われた事もあり、本当に貴重な経験をさせて頂きました。
近年、医学の多くの情報は英語によって記載されています。加えて、医学教育という観点でも、米国を基準にしているものが多く、今後も「アメリカ色」はさらに色濃く浸透していくでしょう。その本場アメリカの臨床を若いうちに経験したい、医学教育の確立された地で研修をしてみたい、という思いがあり、将来海外での勤務に私は興味がありました。今回の留学の自分の目的は、「最終的に目指すゴールの位置」と「様々な人種入り乱れる本場アメリカの生の英会話」を知ることでしたが、達成できたどころかそれを上回る収穫を得られた事は嬉しい誤算でした。

 研修内容についてですが、最初の2週間を感染症内科、後半の2週間は神経内科を研修させて頂きました。感染症内科ではPonce先生やJeffrey先生にお世話になりました。基本的にはコンサル科のため、病棟やICUから依頼が来て、その患者を診察・治療していきます。性質上入れ替わりが激しく、毎日のように2桁以上の患者を把握してはすぐにsign outする、という流れを繰り返していました。流れ作業のように見えがちですが、むしろしっかりと細分化されており専門分野の治療に集中できる、という事がやはり最大のメリットだと感じました。アメリカならではの多彩な感染症に加え、HIV感染者を多く見ました。今では、複数の薬を混合させた合剤の発展に伴いHIV感染者の管理はとても良好となっており、「もし糖尿病とHIV感染のどちらかなら、どっちを選ぶ?」という問いに、向こうの先生方は迷わず「HIV感染だね、糖尿病の方が怖いよ(笑)」と仰っていた程です。

 Ponce先生はとても聡明で優しく、皆から慕われている米国の指導医であり、私が目指す、IMG(International Medical Graduates;海外大学出身のアメリカ医師のこと)としての理想の医師像に近い方でした。そんな方に巡り会えて、様々な会話をして助言を得られたことは一生涯の財産となりました。Ponce先生には夜ご飯に何度か誘って頂き、とても可愛い息子のルカ君と、同じく医師である奥さんのErickaさんと美味しい食事を囲みました。Ponce先生は母国ペルーからはるばるアメリカにやってきた日系ペルー人の方で、高校生の頃に1ヶ月日本にホームステイもされていて、さらに兄弟揃って(双子の兄弟!)アメリカで医者をされています。実は滞在中に、その方とお会いする機会がありました。そのことを知らされていなかったので、車で迎えに来てくれた際、運転席にも助手席にもPonce先生がいらっしゃったのを最初に見て「え、Ponce先生が2人?Ponce先生のクローン??」などと疲労の蓄積から幻覚でも見ているのかと思ってしまいました。楽しい時間をありがとうございました。

 後半の2週間は、Smith先生とNagarajan先生にお世話になりました。他にも、神経内科ではJamesさんを初めとした看護師さん達にも大変お世話になりました。というのも、2人の先生方と看護師さん達は、毎日Navicentで勤務しているわけではなく、Navicentと別の勤務先とを一定期間で行き来しており、チームとして複数人で回していた背景があったためです。チーム制が確立されているからこその興味深いシステムでした。神経内科も感染症内科同様にコンサル科のため、患者が目まぐるしく移り変わります。特に個人的に良かったのは、救急からのコンサルト患者を多く診察できたことでした。また、疾患の幅も広く、詐病(Malingering)/虚偽性障害(Factitious disorder)/身体症状症(Somatic symptom disorder)との鑑別が必要な、複数の異常な神経学的所見が見られた患者数名、自己免疫性脳炎を含む辺縁系脳炎の患者数名、さらには毎日のようにやってくる重篤な脳梗塞・脳出血の患者や遺伝性疾患によるてんかんの患者など、貴重な症例を数多く短期間に経験することができました。レジデントと一緒に回れたことでアメリカの教育体制を深く体験することもでき、とても満足な1ヶ月を過ごすことができました。

 余談ですが、内科の先生2人と内科レジデントの方とランチをする機会がありました。内科の先生のうち1人は大のサッカー好きで、私と同じアーセナルファンだと分かり、その日をもって固い絆が結ばれました。もう1人の方は大の野球ファンで大谷とイチローが大好きだったようで、その話を沢山したら、こちらでも固い絆が結ばれました。海外でもこんなことあるのか、という位に意気投合しました。内科レジデントとは、NARUTOなどのアニメや漫画の話と日本語に関する話を中心に会話が盛り上がりましたが、最後に、「汚い(=スラング的な)日本語を1つ教えて」と言われました。食事中だったので少し悩みましたが、最終的に「馬鹿野郎(As◯hole)」を教えておきました。でも、日本語には実は罵る言葉は少なくてどちらかというと皮肉言葉が多い、例えば「ぶぶづけどうぞ」は「とっとと帰りやがれ、この◯◯野郎」って意味になってしまうんだよ、って補足したら、「それが忍者の心なのね」と言われました。誤解を1つ生んでしまいました。

 改めまして、今回の貴重な体験をすることができたのはひとえに、交流にあたってご尽力くださった方々、現地でお世話になった先生やスタッフの方々の尽力あってこそ成立しているからに他なりません。この場をお借りして感謝申し上げます。

感染症科のDr.Ponceと食事会

内科の先生方と食事会

神経内科のDr.Nagarajan(左)と看護師さん

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