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【研修医】メーコン黒部医療交流

中村 紗都医師


米国研修を終えて 令和4年10月1日〜22日

2022年度になっても、保守的な日本ではなかなか「withコロナ」が日常生活に落とし込まれず、正直なところ私たちの代も米国研修は難しいだろうと半ば諦めモードでした。それがなんと渡米できることが決まり、ふわふわした気持ちでいるうちにいつの間にか出国の日を迎え、この原稿に手をつけ始めた現在は米国研修4日目です。現時点ですでに相当密な時間を過ごしており、研修を全て終えてから3週間分の感想をまとめるのは私の文才では重労働すぎるので、日記形式を採用して日々書き足していこうと思います。グッドアイディアじゃないですか?思ったことをつらつら書いていくので読み手側の理解力で補っていただきたい。

《Day1》

国内旅行サイズのスーツケース1つと普段から使っているリュックを携えて富山空港に着くとまず「荷物少なくない?」って言われる。そんなこといわないで(後日追記:大丈夫でした)。約12時間のフライトを終え、道中最大の不安要素だった入国審査は小宮先生に丸投げしてクリアし、あっさりメーコンのホテルにたどり着きました(ここまで先生と西村さんの後をついていっただけに等しい)。道路を渡った先にあるChick fil-A (人気のファストフード店)、スーパーマーケット、ドラッグストアを物色してこの日は終了。長距離移動おつかれさまでした。

《Day2》

Drs. Dela Cruz夫妻・Drs. Burtner & Ash夫妻にそれぞれランチとディナーに連れて行っていただきました。過去の研修医が散々お世話になってきた方々で、英会話力が乏しい私にもとてもフレンドリーに接してくださいました。ただここで気付く、料理の量多すぎませんか???出されたものを残すという行為にどうしても抵抗があって、この滞在中何度も苦しい思いをしました。せめてもの罪滅ぼし?にホテル内のジムでランニング。

《Day3-4》

Day3が月曜日で、研修としてはいよいよこの日から。交流プログラムに関わる偉い先生方にたくさんお会いしました。こういう場で話される内容は日常会話とは異なり馴染みのない単語がぽんぽん出てくるので、理解は輪をかけて難しかったです。脳は常にフル回転でぷすぷすと煙を出していたところに急に挨拶や質問を振られて戸惑いました。拙い英語の超短いコメントしかできませんでしたがみなさん笑顔で聴いて反応してくださる、優しい...。英語を浴びまくってものすごく疲れてストレスフルだった2日間でした。もともと多い白髪が増えた気がするのはきっと気のせいじゃない。

《Day5-7》Family Health Center (FHC)

研修先のFHCに。予約外来専門の施設です。日本ではあまり馴染みのない「家庭医学」という分野ですが、患者さんの訴えや診察内容自体は日本の内科外来(と黒部の救急walk in)と大きくは変わらない印象を受けました。3日間で気づいた明らかな日本との違いは、既往歴に結構頻繁にHIVの文字がみえること、糖尿病治療中の方のHbA1c平均値が高い(10%超えてくる人がちょこちょこいる)ことくらいでしょうか。
診察は患者さんが待つ部屋に先生が入っていくスタイルで、1人1人にトータルで30分以上かけています。教育機関としての側面もあり、まずstudent doctorが問診と全身診察、residentに相談して2人で再度診察、上級医に報告して方針を最終決定という屋根瓦式をとっていました。アメリカでは4年制の大学を出た後に4年間のメディカルスクールに通い、ようやくresidentになります。そのためmedical student の4年生が日本の研修医2年目と同じくらいの年齢で、診療技能に関してもほぼ同等だと思いました。免許がまだない分できる医療行為は限られるのでしょうが、レベルの高さ(自分が低いとも言う)が衝撃でした。...がんばろう。
訪問診療に同行する機会もいただきました。ベッドから車椅子への移乗や、玄関から車の移動が難しい(ベッドから車までバリアフリーってなかなか非現実的ですよね)方が主に訪問診療のスタイルをとっています。Dr. Strotherが受け持っている患者さんは35人ほどだそう。どの国でもこういった需要はあって、必要な人に必要な医療を届けるにはやはり重要な形態だと再認識しました。
そういえばカルテ使いやすそうだったなあ。確かEpicという名前のシステムだったと記憶していますが、欲しい情報がどこにあるかわかりやすくて、過去の受診記録や処方、既往歴なども見やすかったです。日本にもあんな感じのが導入されてほしい。おまけに各自のデスクトップからアクセスできるのでカルテ難民にならない。いいなあ。

《Day8-9》アトランタ・メーコン観光

野溝さんとアトランタのGeorgia AquariumやWorld of Coca-Colaへ。初のGROOMEとMARTAの利用に成功する。経験値アップ!メーコンのショッピングモールでは偶然スクラブ専門店を発見してテンションが上がり、お互い1着ずつ購入しました。その他詳細は省きます。とってもたのしかった(小学生以下のボキャブラリー)。

《Day10-13》Family Medicine Inpatient Service (FMIS)

この週は家庭医学の入院部門での研修。担当の先生にメールすると7時集合と返ってきて二度見しました。6時半前にホテルを出発すると外は真っ暗で満月がきれいでした。後々知ったのですがこの日は「ハンターズムーン」だったのだとか。早朝出発も悪くないかもしれない。
朝の仕事は、7時ごろから担当患者の回診→8時からカンファレンス→総回診→再度カンファレンスを行い方針確認という流れでした。その後は救急からの入院依頼を受けたり、処置をしたり、専門科にコンサルトしたりと各チームで動きます。とある日には1日に5回コードブルーが鳴り、横にも広い病院を早歩きで動き回りました。FMISは上級医の先生が1人おられるだけで、基本は約5人(+night teamの2人)のレジデントでまわしているようでした。診察もカンファレンスも全てレジデント主体で、上級医は現場監督みたいな感じです。みなさん本当に優秀で、私の指導担当の先生がレジデントだと気付くのに1.5日かかりました。
家庭医学に対して、日本でいう地域のかかりつけ医のようなイメージを持っていたので、外来はともかく入院って一体どういうこと?と思っていました。初日に回診する時に渡された入院患者一覧は、コントロール不良1型DMのDKA、脊損からの褥瘡感染、肥満の妊婦など、実にバラエティー豊富です。聞いてみると、はっきりと専門科に割り振られない患者さんを全て診ていて、必要に応じて各科にコンサルトするそうです。プライマリケアを担い、開けた窓口になっているわけですね。それにしても内科のみならず産科領域までカバーしているのは驚きでした。そして入院日数の短いこと短いこと。

《Day14-16》Walt Disney World

すごかった(小学生以下のボキャブラリー)(2回目)。

《Day17-19》Orthopedics

集合6時半。こちらの病院はとにかく始動が早いようです。いつ朝ごはん食べてるんだ。早すぎてUberが全然つかまらない。
私がまわった外傷整形は、6時半からカンファ→術前の患者さんの回診→8時には手術開始です。Dr. Chanは1日3-4件執刀されていました。2つのオペ室で並行して行っていたので、チームとしては1日5-6件ほど。外傷だけでですよ。私は2日で10件くらい顔を出しました。外傷患者のそもそもの数と体型の他に日本と大きく違うのは、Physician Assistant (PA)さんが活躍されていることです。日本には馴染みのない職種で、医師のもとで診察や処方、手術補助などができるらしく、病棟管理は実質PAさんが担っているようでした。膨大な数の手術はお互いの協力で成り立っているんですね。
Dr. Chanのクリニックは術後フォローがメインですが、とにかく人数が多かった。日本と比べるために何人か数えようと思ったけど途中でやめた。トータル10室ほどの診察室でそれぞれ待つ患者さんのもとに次々とまわっていきました。術前Xp所見が黒部で見てきたものと全く違い、骨幹部でばっきり折れて転位しているものばかりで、受傷エネルギーの高さが窺えました。骨折の原因はCar accidentが1番多いそうです。みんなスピード出しまくってるしルールもテキトーだもんね、納得。中足骨4本にかけてのぐちゃっとした骨折線のまわりに白い細かいものがたくさん散っていたXpがあって、何なのか聞いたらあっさりbulletって言われました。なんだか文化?の差を感じた3日間だったな。

《Day21-22》

帰国。行きと違って先導してくれる小宮先生と西村さんがいないので自分たちでがんばる。

⦅独り言⦆

研修医同期たちはよく知っていることですが、私は人の顔と名前をすぐ忘れてしまいます。日本人相手でもそうなのに、ましてや海外は...。普段の私では考えられないくらい人の顔をじっと見まくったし、本人にバレないようにカタカナで名前と特徴をメモしていました。おかげですぐ覚えられて忘れなかったです!やればできるってことが証明され(てしまっ)た。

日本人はみんなアニメが好きでたくさん観ていると思われています。日本が世界に誇る文化ですが、全然嗜んでなくて申し訳ない気持ち。逆にNARUTOとBLEACHを全力でおすすめされてきました。帰国したらチェックするねって約束しました。

アメリカの人々は健康に気を遣っていて、グルテンフリー食品がどこにでもあるし、成分表示は詳細、メニューにはほぼ必ずカロリー表記があります。そのわりには野菜を全然食べないし激甘お菓子たくさん食べるし量がえげつないし、どうやら気にしてはいるけど制限しようとかいうつもりはないらしい。ダイエットも人生を豊かにするための手段の1つなので、極論本人が満足していれば何でもいいんですけどね。食品に関していえば、スーパーに売られている商品にも基本的に“Vegan”マークが表記されているあたりに多民族国家を感じました。

物価が高い!スーパーの2Lのコーラは3ドルでした。円安(このとき150円くらい)も相まってびっくりしちゃうので途中で円換算するのをやめました。

英会話の勉強をがんばりたいと本気で思いました。便利な通訳ツールが浸透していますが、会話を楽しむにはそうじゃない、相槌とか、瞬発力のある英語が必要だと思います。言いたいことがさらっと言葉に出せないのは大変もどかしかったです。帰国してしばらくしたらこのモチベーションが消えていきそうなので誰か定期的に鼓舞してくれませんか。

お世話になった方々の多くに「何か困ったことはない?他にしてあげられることは?」と声をかけていただきました。表面上だけの言葉じゃなくて本気度が高いんです。あたたかいですよね。知らない人にもあっさり挨拶して“Have a good day.”って言えるのもいいなと思いました。日本の対人文化ではあまり一般的ではないことで、いちいち感動していました。
記憶の新しいうちにと思ったらなかなかの大作を生み出してしまった。日記を締めにかかっている現在は帰りの飛行機内です。黒部に帰ったら即提出します、デキレジでしょ。

《最後に》 現地でお世話になったdoctors、residents、medical studentsのみなさまへ

突如現れた日本人にものすごくフレンドリーで、簡単に馴染むことができました。飛び交う英語全てを拾うことは難しかったですが、単純な単語に言い換えたりジェスチャーを使ったりといった配慮のおかげでそこまで置いてきぼりになることなく、本当にたくさん学ばせてもらいました。できることならもっとお話したかった。雑談を聴くだけでも楽しかったけど、そこで気の利いた一言を投げられたらよかったな。英語力乏しくてごめんなさい。次お会いするときにはぜひリベンジを。

小宮先生、西村さんへ

日々の業務にさらにプログラム関連のもろもろが追加されて、多忙だっただろうと推察します。小宮先生の英語の流暢さと西村さんの顔の広さよ(ディナーで会うあらゆる人と知り合いだったのでは?)。最初の1週間はお2人が一緒で心強かったです。

プログラムの再開・実行に尽力くださった方々へ

Dr. Walkerをはじめとしたオーガナイザーの方々、過去の黒部との交流を今も大事にしてくださっている先生方、プログラムを維持してくださっていた辻先生、吉澤先生、コロナ禍で行き来できない間もレクチャーを通してつながり続けてくださったDr. Katner、総務課など事務の方々、業務の傍らにPCR検体を採ってくださった看護師さん、不在の間に救急をまわしてくれた研修医同期・後輩たち...挙げればキリがありません。
関わった全ての方に御礼申し上げます。
環境の変化が苦手なもので、始まる前は不安でいっぱいでしたが、飛び込んでみたら想像以上の収穫がありました。惰性で過ぎる時間はなく、常に刺激があって心動かされていました。私のボキャブラリーは大変貧弱で、この高揚する気持ちをなんと表現したらよいかわからないのが残念すぎる。ただ間違いなく他で代替し得ない価値ある経験だったと思います。本当にありがとうございました。
今後も黒部・メーコンの交流が続いていくことを願っています。

院内の至る所に当たり前のように
出現するコーラの自販機。
患者さんも普通に買える。

Dr.Chanと。

Family Medicineのレジデントと。
とても仲良くしてもらいました。

スーパーで売られている3.78Lの
アイスクリーム。

ミニーと。ちゃんとリゾートルックの
野溝さんに対して安定の真っ黒の私。

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