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【研修医】メーコン黒部医療交流

林 果穂医師


メーコン研修を終えて

2022年10月15日から10月29日、私はアメリカのジョージア州にあるメーコンという都市で、家庭医学の研修をさせていただきました。
研修科として家庭医学を選択した理由は、日本では家庭医学という分野はあまり馴染みがなく診療内容に興味があったから、内科医を目指しているため老若男女問わず全身の診方を学びたかったから、外来見学がメインと聞いて英語が話せなくても何とかなるかと思ったから...などなど。
渡航直前、不安と寂しさと荷造りの面倒さから「行きたくないなぁ」とぼやいていた(ごめんなさい)私ですが、研修を終えた今は、貴重な経験ができ本当に行ってよかったなと思っています。
以下、そんな私のメーコン研修体験記を記しますが、どなたかの参考になれば幸いです。

研修について

実際の家庭医学でのおおまかな研修内容としては、1週目はFamily Health Centerでの外来見学や訪問診療、2週目はNavicent Healthでレジデントと共に病棟の回診やカンファレンス、ERでの診察に参加するというものでした。
外来では上級医だけでなく、レジデントや学生の診察を見学する機会がありました。指導は完全な屋根瓦方式で、学生→レジデント→上級医というコンサルトの流れでしたが、下級医が緊張しながらプレゼンし上級医はしかめ面で聞く、という日本でよく見る光景(黒部は違いますが!)ではなく、かなりフランクにコンサルトや質問をしている姿が印象的でした。上級医も、追加で行った方が良い問診や検査はアドバイスしていましたが、レジデント/学生の意見をしっかり尊重しており、そのためか皆いきいきと自分の診療ができているように見えました。
毎週火曜日午後に行われるTuesday Teachingは、レジデント向けに行われているレクチャーで、私が参加した週は、腹水穿刺、腰椎穿刺、気管挿管のワークショップやJournal Clubがありました。当然全編英語のレクチャーに超緊張で参加しましたが、シミュレーターを用いたワークショップでは先生やレジデントらにGreat!とたくさん褒めてもらい、日本人も手技中に大げさなくらいの特大リアクションで褒めてくれたらいいのに、と思いました。
また、毎週木曜日に行われている訪問診療は、現地の人のお宅訪問ができるため、最も楽しみなイベントのひとつでした。私が訪問したのは、寝たきりの患者のために見栄えよりバリアフリー重視でDIYしているお家や、独居老人が電気のつかない寒い部屋で犬と2人過ごすお家で、映画で見るようなハロウィンに全力で楽しげな装飾がたくさんのお家というわけではありませんでした。ちなみに訪問診療の対象や診療内容は日本とあまり変わりありませんでした。
2週目のNavicent Healthでは、レジデントが担当している患者(1チーム7人ほど)を一緒に回診しましたが、様々なProblem Listを抱えている患者ばかりで患者の把握に苦労しました。ERから入院した全身管理が難しそうな患者もレジデントがメインに治療や他科コンサルトの検討を行っており、自分ももっと勉強しなくてはと刺激を受けました。

患者について

家庭医学の外来に来る患者の主訴は、息切れがする、足が痛い、何もしてなくても涙が出てくる...など様々。家庭医がうつ病の診断テストやその診断結果によって処方もしていたし、日本では専門性が高く産婦人科医しかできないようなクスコ診も行っており、家庭医学という分野の幅広さにとても驚きました。
さらに、外来に訪れる患者の特徴として特記すべきは、老若男女問わず肥満患者がかなり多いことです。ほとんどがProblem ListにObesity、BMI35-40(ざらにいる)、Diabetes、knee painと書かれていました。先述した腹水穿刺のワークショップでも、予習ビデオでは脂肪が分厚いことを前提として説明されており、肥満患者の多さを物語っていました。
また、乳児の診察に同席した際子どもの健診項目を見せてもらいましたが、成人までの間に発達の程度や感染症に関してだけでなく、うつ病や高血圧症など様々な疾患のスクリーニングがなされるそうです。実際外来患者では、10代~20代でも糖尿病や脂質異常症、うつ病などで数種類の薬を内服している方が多く見られ、スクリーニングの必要性を感じました。
患者ひとりひとりにかける診察時間は15分~30分と長く、食生活(とるべき食材やサプリメント)や運動の指導も医師が行っており、会話を通じて信頼関係を築いている印象でした。
私にとっては、1日中立ちっぱなしで頭がボーっとしてくる中、急に患者から世間話を振られるなどハードな時間ではありましたが、日本とアメリカの共通点や相違点が分かり、外来見学は特に興味深いものでした。

英語でのコミュニケーションについて

この項目をお話しする前に私の英語力について紹介しておくと、読み書きは大学の医学英語の授業でアップデート終了・リスニングはすぐに眠くなる・旅行先の会話はほぼ友人に頼るという、自信を持ってアメリカで研修ができるような状態ではとてもありませんでした。この項目では、私と同じような英語力でアメリカ研修について不安を抱いている方に向けて、私の後悔を書き残そうと思います。そこまで英語力低くないわ、という方は恥ずかしいので読み飛ばしてください。
私がメーコンに行く前に最もすべきだったことは、単語のおさらいでも発音の練習でもなく、個人的にはリスニングの練習だったと思います。
というのも、カルテを読むことは普段論文を読むことがあるからか意外とできます。もちろん分からない略語などもありますが、「これ何?」「これどういう意味?」と聞けばみんな嫌な顔ひとつせずすぐに教えてくれます。また、私のスピーキングはネイティブからすれば赤ちゃんよりも拙いものでしょうが、一生懸命汲み取って理解しようとしてくれます。文章を書くようなイベントは一度もありませんでした。
ただ、リスニングだけは彼らの優しさだけではどうにもなりません。ゆっくり話してくれる人もいますが、耳が英語用になっていないと不思議と1単語も入ってきません。レジデントとランチに行って自分だけが大爆笑についていけない状況、話しかけられても2.3回聞き直さなければ分からないつらさ、Open questionに適当にYes!と返してしまった時の気まずい空気etc.はできればもう経験したくありません。ぜひメーコンに行く前に、洋画を字幕で見たり、洋楽を聴いたりして英語を耳に慣らすなどリスニング対策をしてみてください。
病院の中でもホテルの中でも街中でも、かなりフレンドリーに話しかけられることが多いので、楽しく会話できるときっと研修がより一層素敵なものになると思います。

暮らしについて

私が研修した家庭医学では大体17時には帰宅できたため、近くのスーパーで食料を調達したり、Uber Eatsで注文してみたり(手数料は高いが不愛想で怖い店員に注文するストレスがない)して夕食を楽しみました。
また黒部市民病院で用意していただいたホテルはとても綺麗で広く、1日研修で気を張って過ごした後、ストレスなくゆっくりと身体を休められるのがとても幸せでした。個人的にはホテルのタオルが真っ白で変な臭いもしないことが大変ありがたかったです。
休日にはメーコン散策や、同期の梁くんに誘ってもらったNBA観戦、さらに私の小さいころからの念願だった、フロリダにあるWalt Disney Worldに行くことができました。
2022年10月現在はコロナ禍であり、未だ個人的に海外に行くことはなかなか難しいため、今回初期研修中にメーコン研修が復活したことはとても幸運なことでした。

外来見学が主のFamily Health Center
市街地からは少し離れている

疾患ごとの生活・食事指導が
書かれている

WDW50周年ミッキーと
日本ではコロナの影響で
触れ合えないので泣きそうになった

ショッピングモールの中にあった
ハロウィングッズ専門店

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