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【研修医】メーコン黒部医療交流

山形 恒貴医師


初のアメリカ

2018年の12月いっぱい、アメリカでの研修に行ってきました。その報告を少々。

私は研修先として感染症科を選びました。そこまで深く考えて選んだわけではなかったですが、感染症に対して「よく分からない。なんとなくとっつきにくい」というイメージがあり、環境を変えてみたら興味がわくのではないか、と考えたのかもしれません。結果として、とても良い選択をしたと思っています。

出発が近づくにつれ、「あ~、行きたくない」という気持ちが強くなってきたので、とりあえずアメリカでの目標を決めました。医療に関しては、「感染症に対する関わりたくないという印象を少しでも変える」。具体的にはHIVと抗菌薬について学ぶこと。英語に関しては、「受験のとき勉強して覚えた例文を、さも英語ができる人のように使う」。これができれば英語に関しては合格としようと決めました。

アメリカに着いたときには、「広いなぁ。色んな人がいるな~」くらいにしか感じませんでしたが、翌日スポーツ用品店へ行った時、何気なく手に取ったセール品が銃弾だったこと、周りを見渡すと銃が普通に売っており、子供が親と一緒に銃を選んでいる光景を見たことで、日本とは文化が異なる国に来たことを知りました。さすがアメリカ。
月曜になり、初めてNavicentへ行き、そこで感染症科のDr.Katnerとお会いしました。見るからに優しそうな方で、実際、英語が得意でないことを鋭く察知したのか、必要なときには紙に書いて教えて下さりました。speciality(専門分野)を聞かれたのにspecial tea(特別なお茶?)と聞き間違え、ダージリンとか答えそうになっている私を見て、気付いたのでしょうか。

毎週月曜日はカンファレンスがありましたが、適所にフォローを入れてくれるDr.Katnerのおかげで何について議論していたのか、くらいは理解することができました。ただ、質問は理解できても答えが分からないことも多く、英語以前に医学知識のなさを痛感しました。

毎週火曜日はThe Hope Centerという、無料でHIVの治療が受けられる施設での研修です。感染症科で研修をすると決めた時、是非見ておきたいと思っていたのがHIVでした。HIVに対する知識はほぼなく、針刺しのときにチェックするくらいの印象であり、だからこそ感染した人が何を思い、何を感じているのかを直接見て感じておきたいと思っていました。
そして、実際に患者さんと接してみての率直な感想は、悲観している人は予想以上に少ないのだ、というもので、明るく日々のことを語る妊娠中の方もいれば、嬉しそうに男性の婚約者がいることを話す男性もいる。日本でHIVに関して調べると、暗く沈んでいるような記載が多く、罹ったら終わりという印象を与えるものがほとんどです。この違いは一体どこから来るのだろうか、と考えてみましたが、何よりもDr.Katnerの人柄に関係していると思います。もちろん、日本に比べてHIVの知識が広く知られていることも要因の1つですが、一人ひとりに向き合い、会話を楽しみ、治療がうまくいっているときには一緒になって喜ぶ。診察が終わると、患者さんと握手やハグをして部屋を出て行く。そのあたたかさによって、前向きに生きようとしている人が増えているのではないかと感じました。

今まで文字列でしかなかったHIVですが、今はアメリカで出会った多くの患者さんの顔が浮かびます。そして先生のあたたかさも。治療によってあの人たちはまだまだ生きていられるのだ、と思うと嬉しくなります。

他の曜日は回診に参加させていただきましたが、そこで抗菌薬について「この症状やデータからは疑われる原因菌はなにか」「それらをカバーする為には何をどれだけ使用したらよいか」など実に理論的に教えていただきました。研修が終わる頃にはDr.Katnerが言っていた「logical」という言葉が実にしっくり来るようになり、初めに立てた医療面の目標はとりあえず達成できたかなと思います。1ヶ月回る科を変えず同じ科で研修したこともよかったかもしれません。
休日はアトランタなどに出かけたりしましたが、12月に研修だったこともあり、Dr.Katnerにクリスマスパーティーへ呼んでいただきました。庭の広さに驚き、車庫に停まっている高級車に驚き、家の中にあった巨大なクリスマスツリーに驚き、食卓に並んだターキーや巨大なケーキに驚き。極めつけは憧れの、クリスマスツリーの下においてあるプレゼント。「あぁ、アメリカにいるんだな」と改めて感じ、この時期に来れたことを感謝せずにはいられませんでした。

もう一つの目標であった英語面はコカコーラでした。コカコーラミュージアムで始めに流れた映像がすばらしいこと!!人々の生活の隣にいつもいる存在、そんなものを作り続けている会社に興味を覚え、もっと知りたいと思いました。いつかそんな会社を作ってみたいと思うほど。

もう少し詳しく知るため、本屋に行き、コカコーラに関する本を探すもなかなか見つからず。検索機もないため、残る手段は店員に聞くしかない。聞きやすそうな、優しそうな顔をした店員を探し、その人がサービスカウンターに入った瞬間を狙い、そして、中学一年のときにラジオ英会話で覚えた例文をそのまま言ってみた結果・・・。
伝わった!!感動した!!心の中でガッツポーズ。これで研修の目標は達成である。もう帰っても満足である。

帰りの空港でハンバーガーを食べていた際「2ドルくれないか?」と陽気に声をかけられたりもしましたが、総じて楽しい研修でした。アメリカ、またいつの日か行きたいものだ。

Dr.Katner

Dr.Katnerお子さんたちと

Dr.Katner宅1

Dr.Katner宅2

Georigia_Aquarium

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