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【研修医】メーコン黒部医療交流

野島 晃己医師


米国研修体験記

2018年11月10日、生まれて初めて日本を離れることになった。アメリカの病院を見学するためだ。飛行機に乗ること自体もこの少し前の8月に地域医療研修で北海道の根室を訪れた時を除けば、初めての経験だった。

渡米の日が近づくにつれ、「無事にアメリカに辿り着けるのか?」、「自分の英会話力で4週間もアメリカで生活出来るのか?」、「何か重大な事故に巻き込まれてしまうのではないか?」といった不安が日に日に強くなっていった。にも関わらず、事前に英会話の勉強や海外旅行の際に心掛けるべきことをネットや本で学ばないまま渡米の日を迎えてしまった。しかし、いざ渡米の日を迎えると、不安よりも期待の方がずっと大きかった。この時、自分の中で海外に行ってみたいという気持ちが強いことを実感した。成田空港に着くと、まずその広さと人の多さに驚いた。事前に配布されていた用紙を見ながら必要な手続きを終え、無事に飛行機に乗ることが出来た。根室を訪れた際に短時間のフライトは経験していたが、長時間のフライトは初めてだったため、行きは時間をつぶすのが難しく、大半の時間を寝て過ごしてしまった(今思うと、少し勿体無かった)。行きのフライト中の出来事で一番心に残っていることは、食事の際の飲み物を聞かれて自分がスパークリングワインを頼んだら、CAの方に英語で「20歳以上ですよね?」と確認されたことだ。お世辞だとしても嬉しかったし、英語での軽いジョークを聞き返すことなく理解して微笑むことが出来た事がとても嬉しかった(隣に座っていた外国人の老夫婦も笑っていた)。フライト前は墜落を少しは心配したが、特にトラブルもなく無事にアトランタ空港に到着出来た。エコノミークラス症候群にならなくて本当に良かった(笑)。
そして、同日の11月10日に生まれて初めてアメリカの地に足を踏み入れた。アメリカに着いた直後の率直な感想は、「空港と道路が物凄く広いなぁ。」というものだった。空港からホテルまでの行き方に関しては、事前に配布されていた用紙に何度も目を通していたので、特にトラブルもなくスムーズにホテルに辿り着けた。ホテルに着いた後は、一足先にアメリカに行っていた同期の堂前先生と街中のレストランで夕食を共にした。そのレストランはメーコン(訪れた町の名前)では有名なお店だったよう(後日にアメリカの研修医の方々に連れて行って頂いた)で、アメリカ最初の夜をそこで過ごせたことは非常にラッキーだった。翌日は日曜日だったので、早速ホテル周辺を探索してみた。渡米前は、英語で現地の人とどこまで会話出来るのかとても不安だったが、思っていたよりは会話出来たので、ほっとすると同時に少し自信がついた。
そして、翌日の月曜日からNavicent Health(見学させて頂いた病院名)での見学が始まった。前半2週間は消化器内科(内視鏡検査を専門に行う指導医のもと)、後半2週間は外傷外科を回らせて頂いた。

消化器内科では、基本的に内視鏡検査と回診の見学だったが、内視鏡検査は日本と比べて特に変わりはなかった。しかし、回診は医師のみで回らずにナビゲーター役の看護師の方と一緒に回っていた。回診時に患者さんが院内食のおやつ(2種類のスイーツを2個ずつといった量)を食べていたのは、いかにもアメリカらしいと思った。救急外来のストレッチャー上で診察待ちの患者さんが、院内にあるマクドナルドで買ったハンバーガーを食べていた光景は、おそらく一生忘れないと思う(笑)。指導医の先生は、検査が終わるたびに質問がないか聞いて下さり、自分から質問した際も丁寧に答えて下さった。ある日のランチの際に自分の好きな日本人アーティストを紹介させて頂いた時はとても嬉しかった。

外傷外科では、主に手術見学をさせて頂き、使用している手術器具や術前の消毒、閉創後の処置など、日本での手術と異なる点がいくつもあり、とても新鮮だった。また、自分の銃で自らの心窩部を撃った患者さんの緊急手術を見学させて頂いた際は、当然の事ながら自分にとっては生まれて初めて見る光景で大変驚いたが、自分以外の人達は、「ああ、またか。」程度の反応だった。横で一緒に見学していたアメリカの医学生に聞いてみると、「よくあることですよ。私も護身用に銃を持っています。」と言われ、苦笑いしか出来なかった(笑)。見学前には外傷外科と聞いていたので、外傷症例の手術だけ見学することになると思っていたが、消化器症例の手術も見学することが出来、大変勉強になった。また、カンファレンスや研修医同士の勉強会にも参加させて頂き、こちらも大変勉強になった。見学し始めてから知ったことだが、アメリカでは外科の研修期間は5年間(科によって異なる)で、外科の研修だけ行うことを知り、大変驚いた。研修期間が5年間もある為、4,5年目の研修医が執刀し、第二助手に1,2年目の研修医が入るといった光景もよく見られ、日本ではまず見られない光景だと思った。残念ながら、術野に入る機会はなかったが、アメリカの外科の先生方の手術を見学させて頂き、大変勉強になるとともに自分も早く手術を執刀させて頂きたいと強く思った。
見学させて頂いた科の指導医であるDr. ComanやDr. Ashley(敬称略)をはじめ、見学の際にお世話になった研修医やその他の職員の方々、本当にありがとうございました。

プライベートでは、毎週金曜日の夜には必ず色々な科(自分が回った以外の科も)の研修医の方々を中心にディナーに誘って頂き、その他にもThanksgiving Day(11月の第4木曜日)には、研修医の方のご実家でランチをご馳走になり、金曜日以外にも外傷外科の研修医の方々には積極的にディナーに誘って頂き、大変楽しい時間を過ごすことが出来た。また、日本では全くと言っていいほど自炊をしない自分が、スーパーでラム肉などを購入して調理(焼いたり煮込んだりしただけだが...苦笑)したこともとても良い思い出だ。食べ物に関しては、日本とは随分見た目の異なる寿司(スパイシーで美味しかった)やビッグサイズのステーキとピザ、ハンバーガーなどを食べることが出来、とても楽しかった。ただ、米(ライス)に関しては、日本の白米が段違いで美味しいことを実感し、とにかく白米が恋しい4週間だった(笑)。自分は、土日に自らメーコン市内を出る(アトランタなどへ)ことはなかったが、充分に楽しい日々を送ることが出来た。渡米前に心配していた事故やトラブルにも一切巻き込まれることなく、非常に安全で楽しい4週間だった。

今回、アメリカに4週間行かせて頂いたが、今後留学でもしない限りはこれだけの期間をアメリカで過ごすことはまずないと思われるので、大変貴重な体験をさせて頂いたと心の底から思う。自分の場合、4週間の内の中2週間は他の同期の研修医は1人もおらず、独りで過ごしていたが、そのせいもあってか渡米前と比べると、いくらか度胸がついたように自分では感じている。今回の経験を今後の医師人生だけでなくその他の面にも大いに活かしていきたいと思う。

この文章を読んで頂いた方の中で一人でも多くの方に当院での初期臨床研修に関して少しでも興味を持って頂けたら、自分としては大変幸いである。そうでなくても、この文章を最後まで読んで頂いた全ての方々に感謝したいと思う。

最後になりましたが、今回このような大変貴重な体験をさせて頂き、本当にありがとうございました。

レストランで

外傷外科の研修医・看護師と

家庭医学の研修医・指導医と

内科の研修医と

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