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【研修医】メーコン黒部医療交流

溝上 晴恵医師


Maconでの体験記

黒部市とジョージア州Maconは姉妹都市提携40周年だそうです。そんなanniversary yearに私は1ヶ月間もMaconに行かせていただきました。このことは、行きのフライト直前の成田空港の搭乗口前で、黒部市に訪れていたMacon市長含めた使節団とお会いした時に初めて教えていただきました。ありがたいことに、市長の乗るタクシーで私の滞在するホテルまで送っていただき、アメリカ研修のスタートからなかなかない、恐れ多い経験をさせていただきました。
MaconのNavicent Healthでは耳鼻咽喉科で研修を行いました。耳鼻科は、基本的にはメインの病院から1ブロック離れているthe ENT center of central Georgiaという独立したクリニックで診療を行っていました。ドクター一人一人に個室のofficeがあり、診察室も1人のドクターに対して4部屋(それぞれ耳鼻科の診察台付き)、さらに手術室とCTもあるという立派な施設でした。そこで私が4週間通してお世話になったのが、Dr.Dukeです。専門分野が私の特に興味のある腫瘍で、耳鼻科を選んだ理由もどれも共感できるもので、さらに日本のものが好きと、私には十分すぎるほど完璧な先生でした。とても紳士的でフレンドリーなこの先生のお陰で私の研修は毎日本当に充実したものとなりました。

アメリカの耳鼻科で診る病気の内容は、大きくは日本と変わりがありませんでした。そのため、もちろん全て英語での診療でしたが、内容は大体理解できていたと思います。ただ、文化の違いや人種・体型の違い、保険制度の違いなどで同じ病気でも扱い方が日本と異なる点が幾つかあったので、紹介します。

まず騒音性難聴の原因が日本ではなかなかないものでした。日本では一般的に工事現場やコンサートでの騒音が原因で両側性に起こるものですが、Maconで見たものの多くは銃撃音による片側性の難聴でした(右利きの場合、左耳が銃口に近いため左耳の難聴が多い)。軍で働いている人だったり、特にアメリカの南部ということでhuntingが一般的な趣味だったりと、さすがアメリカ、日本とは違いました。
知っての通り、アメリカは肥満の方が本当に多いです。それもBMI30超えは当たり前。そのため必然的に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんが多く、耳鼻科には毎日のようにSASの患者さんが来ていました。SASの一般的な治療方法は減量とCPAPですが、それだけでは不十分な患者さんが多くいます。そのような方に対してInspire®という埋め込み型のデバイス治療がありました。心臓のペースメーカーのようなデバイスを皮下に埋め込み、呼吸による胸郭の動きを感知してそれに合わせて舌下神経を刺激するというものです。これにより舌は前方に引き出され、舌根沈下が起きにくくなります。もちろん日本にはまだ導入されていません。知っている耳鼻科医もかなり少ないのではないでしょうか。ただアメリカほど肥満のレベルが高くない日本では、どれだけの人が必要としているのかはわかりませんが。
やはり日本とアメリカの医療の大きな違いは、医療制度、保険制度によるものだと感じました。検査は必要最低限のものしか行わない、甲状腺の半葉切除でも日帰り手術で入院が本当に少ない、OTC医薬品の種類が多くその薬を医師が薦めている(処方はしない)、などです。一つ印象に残っている患者さんが鼻ポリープの患者さんです。軽く鼻内を覗いただけでポリープが充満していて鼻閉がかなり辛そう、すぐに手術の予定を立てていくような状態でしたが、吸入ステロイドを処方するだけでした。診察後なぜなのか聞いてみると、半年前にも同じような状態で、医療保険に全く加入していなかったため手術医療費を払える見込みがなく、手術を受けられなかったということでした。ちなみにアメリカの鼻内視鏡手術(もちろん日帰り手術)は外来診察・検査料を含めて小さめの普通自動車を1台買えるそうです。もともとの医療費が高い上に、貧富の差が激しく、保険に入っていなければ十分な医療を受けられないということを、目の当たりにした瞬間でした。この症例はかなり極端な例ですが、アメリカでたくさんの患者さんを見ていて、日本の医療は少し過保護すぎる面もあるのかもしれないと感じるようになりました。というのも、どの患者さんもその診察・治療に納得して、満足して帰っていたからです。日本とアメリカ、どちらの医療制度が良いかはわかりません。どちらも少しずつ変化は必要だと思いますが、それぞれの国にあった制度だと思います。ただどんな制度であれ、患者さんの状況を考え真摯に向き合うことが大切なのだと、改めて感じました。
病院での研修以外の時間も、毎日本当に充実していました。週末は一緒に研修に来ていた助産師の斉木さんと研修医の舟本先生とグランドキャニオンへ行きました。快晴の天気の中で、偉大な自然の力と長い年月を感じました。この研修のために新しいカメラを買いましたが、この感動を収めることは無理でした。別の週は一泊二日の弾丸でニューヨーク一人旅に行きました。目的地を決めずにぶらぶらと街中を歩き、本当に様々な人・モノに溢れる刺激的な街を肌で感じました。ただ思っていた以上に古い町のようで、地下鉄は薄暗くて分かりづらかったです。また研修医の南川先生とは少し危険な雰囲気のgreyhound busでアトランタに行ったりもしました。旅行以外にも、10月ということでDr.Burtner宅にお招きいただき、仮装してHalloween partyに参加したり、子供たちにtrick-or-treatでお菓子を配ったりと、本物のHalloweenを体験できました。また黒部に来たことのあるDr.Dela Cluz familyや看護師さんたちにともdinnerに連れて行っていただきました。どの方々も、黒部は素晴らしい場所で、また行きたいとおっしゃっていて、私は素敵な場所で研修生活を送れているのだと誇らしく感じました。研修最終日にはDr.Dukeのお宅へお邪魔させていただきました。Dr.Duke familyはまだ日本に来たことがなかったようですが、日本のものが本当に好きなようで、家族全員箸の使い方が上手、ステーキよりラーメン好き、冷蔵庫にはワサビ、娘さんの誕生日プレゼントに盆栽と、話していて本当に嬉しかったです。ぜひご家族で黒部に来ていただいて、私が日本の文化をもっと紹介できたらと思いました。

この4週間、旅行だけでは経験できない多くのことを直接見て感じ、学ぶことができました。医師として考えさせられる場面も多くあり、非常に充実していたと思います。そして何より、多くの素敵な方々と出会えたことが何よりの思い出です。このような素晴らしい機会を与えてくださり、ありがとうございました。

Dr._Burtnerご夫妻と

Dr._Dukeと専属Ns.Karen_&_Michelle

Go!_Mercer_Bears!

Grand_Canyonにて

Macon市長ご夫妻と

Manhattanの夜景

Trick-or-Treat

World_of_Coca_Colaにて

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