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【研修医】メーコン黒部医療交流

太知 さやか医師


アメリカ研修報告 

今回アメリカジョージア州のナビセントヘルスでの約2週間半の研修を終えましたので報告します。 私は主に感染症科で研修していました。そこではレジデントやフェローとともに行動していました。レジデントとフェローはとても優しく接してくれました。英語に不慣れな私のために、レジデントはGoogle翻訳を使ってまで私に伝えようとしてくれて優しさに感激しました。フェローも、私は外国人の夫がいるからあなたの気持ちがわかるわ、英語はここで練習していけばいいわよと言ってくれ私のためにゆっくりとした英語を話してくれるとても親切ないい人で感謝の気持ちでいっぱいでした。朝夕には黒部にも来られたことのあるカートナー先生と合流してのチーム回診がありました。カートナー先生は特にHIVの治療に献身的にあたっておられる先生です。患者さんの体に優しく触れ、穏やかに、目線を同じにして語りかける姿は医師として見習うべき姿勢であり、カートナー先生の魔法にかかったように患者さんが先生に心を開いているのが私にもわかりました。感染症科にいるとなんてHIVの患者さんが多いんだろうと驚きました。先生達の話ではアメリカのなかでもメーコンは多いということです。私は週に1回HIV専門の病院へ伺う機会があり、カートナー先生の診療を見学しました。そこではマーサー大学のメディカルステューデントも実習していて彼らは患者さんの問診をとったり身体所見をとったりしていました。日本とやっていることは大きく変わらず少し安心したのを覚えています。当たり前ですが患者さんは一見してもHIVの患者さんとは全くわかりません。みんなそれぞれの暮らしがあり、その人に合わせて診療していく必要があります。カートナー先生がまず最初に必ず聞くのは、服薬状況の確認です。HIVはいまや薬の内服さえしっかりしていればウイルス量を検出値以下までもっていける疾患です。カートナー先生は必ず患者さんとともにウイルス量とCD4の値を確認して、良い結果な時は素晴らしい!と患者さんに希望を与えて向き合っておられました。様々な患者さんがいますが概してHIVのイメージがガラリと変わり、もはや昔のように死の病ではなく、糖尿病などとある意味同じように服薬コントロールをしっかりすれば寿命を全うできる慢性疾患であると感じました。服薬コントロールをしっかりして、経腟分娩にて赤ちゃんを産んだ妊婦さんにも会えました。赤ちゃんは元気でHIVの母子感染もなく過ごせています。このような患者さんを見ると服薬の大切さを感じ人々の幸福に貢献している医療だなと思いました。アメリカに比べて日本はHIV患者さんがまだ少なく診療経験のある医師も少ないと思いますが今後日本でもHIVの患者さんは増えることが予想され、この経験は必ずこれから役立つと思いました。
感染症科では、病棟回診もするのですが、その患者さんも半分以上はHIVを持っている状況でした。病棟患者さんの疾患はかなり多岐にわたっていて、クリプトコッカス髄膜炎や肛門ヘルペス、PICCカテーテル感染、HIVによる副腎不全、抗真菌薬フルコナゾールを使っていた患者さんがQT延長症候群となるなど見たことのない疾患が数多くありました。
カートナー先生は身体診察を非常に重視する先生で、肝臓の触れ方、腋下リンパ節の触れ方などを丁寧に教えてくださいました。

この感染症科での研修は日本では見ない疾患を見たことで視野が広がった点、そして医師として見習うべき先生に出会えた点でとてもいい経験となりました。

今回、感染症科でなにかと連絡をとったりお世話になったクマール先生のすすめがあり産婦人科もほんの少しですが見る機会がありました。産婦人科ではレジデントとともに行動しました。レジデントといってもこちらの研修医とは違い、その科に属するレジデント達が診療の中心で病棟でも手術室でも主治医として行動しています。さすがに手術はアシスタントプロフェッサーなどかなり上の先生の見守りのもと行われますが、レジデントがどんどん執刀していてその姿に感化されました。またこちらの先生達は行動が早く毎朝7時にミーティングを行い手術は7時半スタートで夜遅くまでかかることもあり、すごくパワフルな先生が多かったです。また日本ではまだ婦人科では保険適応になっていないロボット手術を見学できました。これもアメリカならではの経験であり、ロボット手術を初めて見た私にはあんなに手元が自在に操れるなんて衝撃的でした。でもアメリカでは随分前からロボット手術はやっているということで、日本で適応になりそして広まるのにはまだ時間がかかりそうでもったいないことだと思いました。ロボット手術は慣れれば本当に革新的なものだと思います。

感染症科でも産婦人科でもこちらでは主にレジデントやフェロー、医学生と関わることが多く、日本とアメリカの医学教育の違いや医療保険制度の違い、日本製のもの(車など)、メーコンにある日本食のレストランについてや家族のこと、福島原発は大丈夫かなど色々な話をしました。しっかりわかっていない部分もあるかとは思いますが会話ができ、自分の言ってることが伝わっただけで嬉しかったし、こんな拙い英語でも伝えようとしたらなんとなくでも伝わるのかと驚きました。
英語に関しては2週間半では上達はしませんがボディーランゲージと伝えようとする心があれば最低限はなんとかなると思いました。しかしこちらに向かってゆっくりはっきり伝えようとしてくれる時はわかるのですが、深い話を先生がしてくれているのにその内容をしっかり理解できない時や、ネイティヴ同士の会話が全然聞き取れない時はもっと英語ができたらなと悔しく思いました。特に日常会話の聞き取れなさは半端ではなく母国語の壁はなかなか厚いなと思いました。そして日本でもし外国の人と接することがあれば親切にしたいしゆっくりはっきり話そうと思いました。

おまけになりますが週末フリーの時間も目一杯楽しめました。1週目の休みではアトランタまで弾丸で行き、コカコーラミュージアム、水族館、そして沢山の刺激的な乗り物があるシックスフラッグスという遊園地で同期と楽しい思い出をつくれました。2週目には再びアトランタに行き有名なCNNやオリンピック記念公園を訪れ、とある縁でメーコンのクリスマスパレードに参加することもできました。最後の週末の3週目はニューヨークまでのなかなか弾丸旅行でした。巨大なメトロポリタン美術館、ブロードウェイでのミュージカル鑑賞、自由の女神や9.11ミュージアムを訪れることができました。特に印象深かったのは9.11ミュージアムでありこの大きな出来事で世界が変わってしまったなというのを実感しました。なかなか来れないアメリカでの旅行もいい経験となりました。

今回の研修に関しては本当に良い経験となり、大きなトラブルなく終えられたのも研修センターの辻先生や西村さんたちの支えのおかげだなと思っています。黒部に来られたアメリカの先生方と話していると、西村さんや辻先生がいかにこのプログラムに尽力してくださっているかがよくわかります。正直行く前は研修にどんな意義があるかはっきりわかっていませんでしたが、今となっては研修医の間にアメリカへ科を自由に選択して見学できるなんてものすごく貴重な機会だったなと思っています。そしてこの素晴らしいプログラムがこれからも続いていけばいいなと思っています。

今回研修にあたってターク先生やチャン先生、クマール先生、カートナー先生にはディナーに誘っていただき楽しい時間を過ごさせていただきました。アメリカでお世話になった方たちにも、日本で支援してくださっていた方たちにも本当感謝したいです。ありがとうございました。

カートナー先生家族とディナー

感染症科チームメンバー

チャン先生宅でのディナー

ターク先生に連れられてクリスマパーティ

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