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【研修医】メーコン黒部医療交流

津田桂医師


平成22年11月20日-平成22年12月19日

アメリカ研修で見たこと感じたこと

まずこのような貴重な経験をさせていただく場を与えていいただいた黒部市病院に感謝したいと思います。私は2010年の11月下旬から4週間、アメリカの中央ジョージアメディカルセンターで見学をさせていただきました。私は小児科か産婦人科の道を考えているので、今回は小児科をメインに見学させていただきました。おおまかなスケジュールは1週目が小児の鎮静、2週目は救急外来、3週目は新生児と外来、4週目は小児一般病棟といった内容でした。

今回見学した病院は病床数600少々でジョージア州で2番目に大きい病院であり、また大学と連携した教育病院でもあるので、規模が黒部市民病院とは違うので単純には比較できませんが、まず感じたことはマンパワーの違いです。仕事が非常に細分化されており、医師や看護師の他に日本には見ないPhysician`s Assistant、Nurse Practitioner、挿管・人工呼吸器の技師など様々な職種の人々が働いており、患者さん一人あたりにかかわるスタッフの数が非常に多かいというのがアメリカの病院の第一印象でした。マンパワーが豊富でいいですね、とあるドクターに言ったら必要ない職種もあるし、それが高い健康保険の一因でもあるとにがにがしく述べていたのが印象的でした。
1週目はデラクル-ズ先生につき、MRIやCT、消化管内視鏡の検査の際の小児の鎮静の見学をした。薬の量が大切なのは日本もアメリカも同じで何度も子供の体重・薬の量について確認していました。幸運なことに週末はサンクスギビングデイ(感謝祭)であり、指導医のお宅に訪問させていただき七面鳥をおいしくいただきました。またブラックフライデイという一年で最大のスーパーセールの日があり、指導医夫妻と一緒にショッピングを楽しむことができ、グッドプライスで我が家の奥さんにクリスマスプレゼントを買うこともできました。

2週目は救急外来の見学でドクター、ナース、フィジシアンズアシスタント、EMSといった色々な職種の方々について見学させていただきました。また救急車に同乗させていただき搬送の見学もさせていただきました。私は黒部市民病院でしか働いたことがないので他の病院ではどうか知りませんが、アメリカではまず患者さんが個室の診察室には入り、そこにスタッフが入っていくというスタイルでした。患者が受付をすると、まずバイタルサインの確認がされ、既往歴、内服状況、アレルギー、受傷起点などの質問事項のチェックシートを記入します。そこでトリアージされ緊急性が低ければ、まずはフィジシアンアシズスタントという職種のスタッフが患者の問診・診察を行い必要に応じて、採血・画像検査のオーダーを行い、その後の対応を決めていきます。最後は救急医に確認し終了です。いわば黒部市民でいえば研修医の仕事のような仕事をしていました。問診表には健康保険の種類の欄があり、救急外来には患者さんの検査オーダーとその実施の確認欄、担当スタッフ名、入院・帰宅など今後の方針についての情報のモニターが数台設置されており、スタッフ全員で情報を共有できるようになっておりよい仕組みだと思います。患者さんは心肺停止の人から軽傷の人まで様々で、なかには常連の人までおり、患者さんの受診理由については黒部市民病院と似ていると感じました。
3週目はクラークDrにつき午前は新生児、午後は一般外来の見学をしました。午前中は回診で、新生児室の回診が行われ、クラークDrに二人のレジデントDrと一人の医学生がつき、一症例ごとにレジデントDr又は学生が患者さんについてプレゼンテーションを行い、クラークDrが診察し、その後に質疑応答というスタイルで進められていきました。回診後は一つのトピックについての発表があり皆でそれについて勉強するというスタイルでした。昼は昼食を食べながら、何らかのレクチャーがあったり、症例検討をしたり、みんなで問題集をといていたりと皆さんよく勉強していました。午後からは病院の向かいにあるチルドレンヘルスセンターに行き、一般外来の見学をしました。咳・鼻水の子供から予防接種や健康診断の人まで様々で、Drが親はやたらと薬を欲しがると言っていたのが興味深かったです。患者さんの心理は日本もアメリカも似ているようです。

4週目は一般病棟でレジデントDrのパキスタン出身のアダンさんにつき見学しました。ここでのレジデントDrは黒部市民病院での研修医と同様に患者さんの問診、診察、検査のオーダー、薬剤の処方、文書の作成、他科への紹介のお願いなどを忙しそうにこなしていました。日本との違いはレジデントDrは完全主治医制ではなく、レジデントみんなで入院患者を治療していくというところでした。入院理由としてはRSウイルスによる細気管支炎、川崎病といった日本でもよく聞く疾患が多かったです。こちらでは感染に対する管理がより厳しく、頻回の手洗い、消毒はもちろんのこと、インフルエンザの患者にn95マスクを着用して診察していたのには驚きました。
全体を通して感じたことは、行われている医療行為は根本的には非常に似ているがアメリカの医療(今回の病院と黒部市民病院を比較して)は物・人的資源は日本より充実している事です。もちろん日本の医療もそれに負けていませんが、それは個々のがんばりで支えられていると強く感じます。また健康保険は日本とは異なり所得に応じて健康保険のグレードが変わり、低所得の患者さんは使えない薬があるなど医療がかなり制限されていることに衝撃をうけました。先進をイメージさせるアメリカの医療ですが大きな問題も抱えているようです。

不安でいっぱいでの渡米でしたが、皆さんはとても親切で充実した4週間を過ごすことができ、アメリカの医療を見ることで日本の医療を客観的に見るよい機会となりました。この経験を今後の医師としての人生に役立てていきたいです。

指導医のDr.DelaCruzと

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