2023年 当院から1名の看護師が米国研修に行ってきました!!
米国研修を終えて
今回、私はアメリカ、ジョージア州メーコンにある姉妹病院である、Atrium Health Navicentに、10月2日から看護師交換研修制度で4週間研修に行ってきました。私の現在の勤務場所は東病棟3階です。黒部市民病院での経験は13年目になります。以前勤めていた病院での経験も踏まえると、今まで、手術室、消化器内科・消化器外科、集中治療棟、東病棟6階での経験をしてきました。4週間の研修を終えて、感じたことや学んだことを報告します。
私が見学・体験してきた部署は、MICU(医療用ICU)・手術センター/周術期エリア・キャスラボ(血管撮影室)/EPラボ(電気生理学)/ストレスラボ・緊急医療施設・カーライルプレイス(リハビリ専門病院)・整形外科ユニット(骨折/関節)・ER(救急救命センター)・医療観察ユニット(腎透析)・急性透析ユニット(病棟用)・STICU(外科外傷ICU)・腫瘍学ユニット・小児病院(新生児ICU/小児ICU/小児ER/一般小児科)・PICU(神経ICU)・脳卒中専門ユニット・脳神経外科ユニット・ピーチ群病院・心臓血管外科ユニット・胸部外科ユニット・CVICU(心臓血管ICU)・オレンジストリート(訪問診療部)・テレメトリ監視ユニット(心電図モニター監視室)・PICCチーム視察・メッドサージユニット(あらゆる分野の医学的診療科)・ファミリーバースセンター(産後ユニット)・ハートセンター(心臓内科・心臓外科・血管外科)・スーパーバイザーとの院内ツアー・パインポイント(ホスピス専門病院)、です。その中から、MICU・手術センター・緊急治療施設・ER(救急救命センター)・キャスラボ/EPラボ・整形外科領域に絞って紹介したいと思います。
ナビセントではICUは複数あり、それぞれ専門性に特化して区別されています。ICUの病床数や構造は、各々のICU毎に異なりますが、機能や設備等はどのICUも一緒です。MICUとは、医療用ICUのことです。簡単に言えば各専門性に特化したICUに該当しない患者で内科領域全般におけるICUです。当院のICUに似た立ち位置です。例えば、当院のように内科領域の一般病棟では管理しない、CHDFの管理、人工呼吸器管理の患者です。ここでは、ドラッグによるウェルニッケ脳症で人工呼吸器管理中の若年女性やCOVID-19後の透析中(CHDF)の患者等がおられました。内科的な疾患・病態による呼吸不全や腎不全で人工呼吸器装着やCHDF管理中などICU管理が必要な患者がメインです。透析中の患者は毎日、医師・看護師・栄養士・薬剤師、そして、患者の意思が尊重できない場合は、家族と話し合いをして、透析を継続するか毎日カンファレンスが行われています。これは、アメリカではごく一般的な習慣だそうです。
周術期エリアつまり、手術センターとは、基本的に術前から術後までをこの部署で全て完結します。術式により異なりますが、基本は当日入院・当日退院です。手術を行っている診療科は、耳鼻咽喉科・整形外科・一般外科・心臓血管外科・形成外科・脊椎・脳神経外科・肥満・婦人科及び婦人科腫瘍学です。手術は朝の5時30分から行われ、1日当たり平均50件程です。整形外科手術を例に出しますと、人工膝関節置換術の手術を受ける患者さんがいたとします。患者本人と周術期エリアスタッフが手術日に適切に準備されていることを確認するために、電話インタビューを受ける又は、手術日の前に対面訪問のいずれかを通じて、入院前麻酔前検査(PAT)で周術期スタッフと一緒に体験を開始します。手術当日、術前・術後滞在エリア(2F又は6F)に入院し、看護師一人が患者の手術の準備をします。患者のための全ての外科的準備とチャートを完成します。手術終了後、PACU(麻酔後ケアユニット)に搬送されます。PACUとは、日本で言う回復室(リカバリー室)の事です。ここで、麻酔から回復し、全身の快適状態を管理します。回復室での管理が問題なければ、患者は術前にいたフロアの術後エリアに戻ります。ここで患者さんは帰宅又は、当該病棟へ入院継続という流れになります。人工関節置換術後の場合は3日間の入院だそうです。そして退院後に、リハビリ施設に通院という流れになるから驚きでした。
キャスラボ/EPラボについてです。キャスラボとは、血管撮影室の事です。ここでは、朝5時30分から担当医により、様々な血管内カテーテル検査や血管内カテーテル治療が行われています。私はこの日、心臓カテーテル検査や心筋梗塞後のPCI治療(経皮的冠動脈インターベーション)、上腕動脈の血管バルーン拡張術を見学しました。当院では、見学したことがなかったので貴重な体験でした。EPラボとは、電気生理室の事です。ここでは、運動負荷などのストレスを与えて、不整脈をあえて誘発し電気的除細動をかけて洞調律に戻す不整脈の治療を見学しました。また、心臓カテーテルを介してアブレーションの見学もできました。非常に細かな調整を直に見ることができ、印象的でした。こちらの患者は同エリアに入院及び外来用ベッドが33床あり、別フロアにも9床ベッドがあります。
緊急医療施設は全部で3ヵ所あります。当院で言う、救急外来のような部署です。365日、年中ほぼ無休で稼働し1日に50~100人程度の患者が来院します。Navicentでは、上級看護師と呼ばれる看護師がいます。この部署には医師がいません。彼らは、医師のように検査や薬剤の処方ができます。ここでは、来院された患者に対して、身体所見を患者から事細かく問診をします。日本と違うのは、ドラッグの使用について必ず聞き取りします。そして、真実を確認するために、尿検査を必ず行うことです。これは驚きました。これらの施設で出来ることは、レントゲン検査と各種培養検査、血液検査、尿検査です。検査結果で異常があれば、患者に電話連絡し本院の受診の有無を相談するそうですが、受診を決めるのは患者さん本人です。
リハビリ専門病院では、14日間、最大で21日間の入院が可能です。退院後は、骨折術後、脊椎疾患術後などの整形外科術後の患者が入院されますが、通院してリハビリを行う患者さんも多くいます。整形外科病棟では、主に骨折と関節とに分けられています。脊椎疾患は、アメリカでは日本で言う脳神経外科領域に分類されています。なので、頚髄・脊髄損傷の急性期はPICU(神経ICU)に入院します。一般病棟における特徴として、一番紹介したいのは患者認証システムの完璧さです。どういうことかというと、医師や看護師、薬剤師などの当該職員は、ローバーという携帯端末機器を持っています。この端末では、オーダリングや患者認証、院内メールや通話機能などほぼなんでもできます。このローバーという端末を電子カルテと連動させているのです。そして、各病棟に調剤室があります。当院のように薬剤科が調剤するのではなく、病棟の部署毎で看護師が1回1回、注射薬だけでなく、内服薬も調剤しているのです。これにより、オーダーが出たらすぐに対応し速やかに患者に投与できます。特に内服薬では、薬を調剤庫から患者本人の認証をして完全一致しないと取り出せません。そして、患者の元へ持っていきます。患者のリストバンドで患者認証を、ローバー端末を使って薬のバーコードと患者のバーコードとをそれぞれ認証します。これを行うことで、絶対に患者間違いは起こらないようになっていることが、素晴らしいシステムであると感じました。たとえ、思い込みで別の患者に持参しても患者認証することでブロックできる仕組みになっています。これは、注射薬なども全て同様です。また、輸液ポンプやシリンジポンプもこのシステムと同期しており、点滴を患者認証すると輸液ポンプで投与する流量までポンプに同期しているには驚き、非常に安全で便利なシステムであると感じました。これにより、ポンプの流量設定間違いも防げるようになっています。他にも、バイタルサインマシーン、静脈ファインダー、膀胱内の残尿を知ることができる膀胱スキャナーといった便利な機械が多々ありました。
ER(救命救急室)では、丁度この日が災害訓練の日でした。長くなるので割愛しますが、当院の災害訓練と同様、搬送された患者をトリアージしそれぞれのエリア毎に患者を振り分けて対応・訓練をされていました。Navicentではトランスポーターと呼ばれる搬送専門の職種の方がいます。その方々が搬送をメインで行っています。また、呼吸療法士というリハビリ部門の呼吸専門の職種の方もいます。この方が、患者の人工呼吸器管理を全て行っています。ERは最大ベッド数60ベッドがあります。その内、13の個室部屋があり、別に1部屋は外科外傷ルームとして3ベッドあります。病床は人工呼吸器装着患者など重症患者がメインです。主に滞在している患者は、外傷が多く、銃による銃創・ナイフなどによる切創・交通事故などの外傷が多いそうですが、内科系など、様々な疾患・病態の患者が在院しています。病室が13室しかないため、個室で管理できない患者は廊下で治療や検査を受けて待機されています。24時間~50時間以上も退院するのか、入院するのか方針が決まらず滞在している患者さんもいるそうです。これらの患者さんは会議して行き先を決めるのだそうです。私が見学したこの日は、ER滞在患者が66人居て、待合室に10人、待機患者が38人中、24時間以上滞在中の患者は数名もいて驚きました。
4週間の研修は大変でしたが、6月に黒部に来られたレスリーさんとクリスティンさんに毎日の研修や休日の予定について調整をしていただき、本当に助かりました。彼女達のおかげで毎日、楽しい時間を過ごすことができました。毎日のディナーや週末は、各部署の色々な方たちに観光に連れて行って頂きました。水族館、コカ・コーラ工場、秋フェスティバル、農場祭り、空軍博物館等に連れて行って頂きました。その中でも特に印象的だったのは、ゴルフです。ゴルフは2回連れて行って頂きました。アメリカ空軍基地内にあるゴルフ場には、空軍関係者しか入ることができません。大変貴重なゴルフ場に連れて行って頂きました。本当に幸せな時間でした。
最後に、このような機会を与え、支えてくださった家族、看護部、病棟スタッフの皆様、現地でお世話になったレスリーさんとクリスティンさんを始め、現地のスタッフの皆様に深く感謝致します。ありがとうございました。
佐藤 和徳(東病棟3階)
佐藤 和徳(東病棟3階)
6月に黒部に来られたレスリーさん、クリスティンさんと
テリーさん、夫のスコットさんとメーコン空軍基地内でのゴルフ
トレーシーさん(ナビセント看護部長)と旦那さんとレーン農場観光
H(ハート)6F(心臓内科)のスタッフの皆さんと
こども病院、NICU、小児ER、小児ICU、小児一般病棟の皆さんとのディナー
トムさん、シェリルさん、夫のドナルドさんとのゴルフ
NEPD(看護教育)の皆さんとGA全国フェア