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東 友理医師

 Exchange program at Navicent Health Hospital

 このような機会を与えていただけたことに心より御礼申し上げます。言葉では言い尽くすことができないほど貴重な経験をさせていただきました。
 私は辻先生を始めとする先発隊とともに行かせていただきました。まずアトランタに到着してからの歓迎の凄さに驚きました。このexchange programに関わってくださっている方々とお会いすることができ、13年間の歴史を知ることができました。今の形になるまでに、本当に多くの方々の努力と支援があったことを実感し、これから過ごす1ヶ月を、悔いのないよう、少しでも多くのことを吸収して帰ろうと決意を新たにしました。
 私は循環器内科であるDr. Hudsonのもとで研修を行いました。Navicent Health HospitalはHeart Towerなる循環器に特化したセンターを有しており、中でも術後患者や急性期患者をみるCVICU(cardiovascular intensive care unit)を拠点として学びました。毎日コードブルーの鳴り止まないsuper excitingな場所でした。研修は毎朝の回診から始まります。1人の看護師さんが最高2人の患者さんを担当しており、回診の際に患者さんの状態を細かく報告して下さいます。そのスマートな報告に、学ぶところが多くありました。薬剤や治療法など分からないことがあればすぐに質問するようにしていた結果、始めはその流暢な報告に全くついて行けませんでしたが、研修を終える頃には情報をある程度把握し、治療方針についての質問もできるようになっていました。回診が終わると、心エコー及び心電図の読影です。ここでは1年目に中田先生に鍛えていただいた事が大いに役立ちました。日本語でも分からないことを「じゃあ英語では?」と質問され、心電図やエコー用語が英語でも記憶されていたので、日本語と遜色なく学ぶことができました。その後はエコー室での見学です。経胸壁エコーはecho tec. と呼ばれる専門職の方、女性6人が全て行っていました。NICUでVSDと三尖弁形成不全を合併した新生児の検査があり、私には正常ではないということしか分からないことも、丁寧に説明して下さいました。また彼女達が誇りを持って仕事している姿がとても素敵でした。患者さんやその家族への声かけに気遣いが示されており、「私達が関わるのは検査の時だけだけど、患者さん一人一人にストーリーがあって、そこに積極的に関わりたい。そうすることで自分にしかできない仕事になるから。」と語っておられたことや「像を取ることに集中するのではなく、その患者さんの病態を考慮しながら、何を写すのが大切かを考えるの。」という言葉にprofessionalismを感じました。経食道エコーは医師によって行われていました。黒部市民病院では1件しか見たことがありませんでしたが、術前検査、術中検査と多くの症例を見ることができました。印象に残っている症例は、大動脈弁置換術を行い閉胸しようとしていたところ、経食道エコーで左房内に1cm×6cmの血栓様の異物が見つかり、HITかもしれないと検査を進めつつ再開胸するとミキソーマ様のゼリー状の物体が出てきたというものです。また術中エコーによって人工弁のサイズ不適合を指摘され、サイズを変えて入れ直した症例があり、手術は循環器外科が行い、その評価をするのは循環器内科というのが面白いと感じました。open chest surgery(大動脈弁置換術、僧帽弁置換術、CABG、心膜開窓術)も多く見学させていただきました。想像以上に短時間でスピーディーに進む手術ばかりでした。心臓血管外科の中には唯一の女性医師Dr. Reedがいらっしゃり、お話を伺うことができたのも大きな収穫でした。心臓血管外科というタフな科ではあるものの、自分が一番面白いと感じた科であったため不安はなかったそうです。一番大変なのは、プライベートを充実させるのが難しいことであり、Dr. Reedもまだ独身です。それでも自分がやりたいことを出来ているから充実しているとのことでした。将来の決定をする際は、自分が何を優先したいのか良く考えるようアドバイス頂きました。またAnesthesiologist Assistant (麻酔助手)と呼ばれる専門職の方が気管挿管、経食道エコーをさせて下さり、大変貴重な経験となりました。このような手術の他にもカテーテルアブレーションやPCIも見学させていただくことが出来ました。その際に驚いたことは、手術も含めてこれらの手技が基本的に医師は1人、看護師、Physician Assistantといったスタッフとともに施行されているということです。心不全外来にもお邪魔しました。日本と明らかに違うと感じたのは年齢層です。若い方の心不全が多く、理由をお尋ねしたところ、特にMaconは南部であり塩分摂取量が多いということ(これはホテルの食事や外食で実感しました。)、発展途上国からの移民も多くリウマチ熱が原因の場合もあるとのことでした。この外来の診察はNurse Practitionerの方が行っていました。診察、処方、採血もできる専門職です。心臓リハビリセンターの見学もしてきました。1コースは1回1時間、1週間に3日を3ヶ月です。PCI後、CABG後、慢性心不全など心疾患の方、COPD、間質性肺炎など呼吸器疾患の方が対象です。モニターをつけながら運動を行うコースは、保険でカバーされなければなんと1コースつまり3ヶ月7200ドルだそうです。カバーしてくれる保険を持っていない人のために、モニターはつかないけれど1ヶ月55ドルで同じプログラムを受けられるようになっています。また毎週木曜日には患者教育のためのレクチャーを行っています。皆さん熱心に参加されており、よく自分の病態を理解しようとしている姿勢が印象的でした。
 循環器以外ではGeneral medicineのDr. Ashのofficeにも行かせて頂きました。診察室は患者さんが入ってくるのではなく、複数の診察室で患者さんが待っておりそこに医師が入って行く方式です。じっくりお話を聞いておられ、日本よりゆったりした診察でした。また消化器外科の手術も見せて頂きました。アメリカならではのBMI35以上の患者だけが受けられる胃縮小術です。ここではda Vinci Surgical Systemも登場し、執刀医が患者から離れて手術をするという不思議な光景を目にしました。
 週末にはMacon観光(Hay House、Ocmulgee National Park)、ウォルトディズニーワールド、グランドキャニオンへ行ってきました。それぞれに見所があり、研修とは違った楽しさを経験しました。そして何と言ってもお城のような豪邸に招待してくださったDr. Turk夫妻、Drs. Burtner and Ash夫妻。日本とのあまりの邸宅事情の違いに開いた口がふさがりませんでした。Drs.Narsinghani and Kumar夫妻にも美味しいインドカレーのお店に連れて行って頂きました。美味しい食事をしながら先生方とお話し出来た時間は、最高に幸せで楽しいものであり、そのおもてなしの精神にただただ感謝するばかりでした。
  私は大学6年の時に老年医学を学ぶためオーストラリアに1ヶ月留学していました。しかしその時の私には十分な知識、英語力がなく、海外での振る舞い方も分からず最後は早く帰りたいという思いが強かったのです。ところが今回は全く違いました。最終日にDr. Hudsonと別れる際には涙が止まりませんでした。心からまだ帰りたくないと思いました。これだけ密度の濃い、充実した研修が出来たことが本当に嬉しく、必ずや今後の人生の糧となることと思います。黒部市民病院を研修先に選んで良かったと改めて強く感じました。お世話になった先生方、スタッフの方々、本当にありがとうございました。

  
グランドキャニオン(左) 麻酔助手の方々(中)エコー技師の方々(右)

 
心リハスタッフの方々(左) 病棟スタッフの方々(右:Dr. Hudson)(右)

 


黒部市民病院

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