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湯浅貴博医師

平成25年11月2日-平成25年12月2日  

 私は、2013年11月2日から11月30日までの4週間、アメリカ合衆国ジョージア州メーコン市に留学させていただき、一ヶ月の滞在中にERならびにFamily Medicine、腎臓内科を見学しました。このような貴重な経験をさせて頂き、関係者のみなさまには感謝申し上げます。

ER(Emergency Room:救急救命室)

 一週目は、ERを見学させていただきました。まず救急部に行って驚かされたことは、その規模です。患者診察室が50部屋もあったのです。そのほとんどが個室であり、部屋の中には入院患者が使用するようなベットやテレビが備え付けられていました。救急患者にテレビを見る余裕があるのかは疑問でしたが...(家族などの利用者を含めると8割程度の方は利用されているようでした。)その設備のおかげか、患者さんが診察を早くするよう喚き散らす光景を見ることはありませんでした。
 患者入室からの流れとしては、まず研修医もしくはPA(Physicians Assistant)が診察し、救急医にコンサルトを行ないます。その情報を受け取った救急医が診察後、検査をオーダーし、その検査結果を受けて帰宅、もしくは各専門医に割り当てられて診察や入院に至るというものでした。
 日本との違いとしては、上にあげたような施設の規模に加えてマンパワーの違いを感じました。下記にそれを強く感じた一例を記したいと思います。  症例は1歳の呼吸不全です。数日前から感冒症状が出現、その日になって呼吸状態が悪化したというエピソードでした。患者入室直後、どこからともなく15人ほどの看護師や検査技師たちが集まってきてそれぞれ処置を開始しました。あるものはルート確保、あるものは呼吸安定ならびに気管挿管、あるものは骨髄ルートをとっていました。この時点で医師から特に指示はなく、それぞれが黙々と処置を施行していました。その後医師が入室し、患者状況ならびに家族から今回の経緯を確認し、その後小児科Drに引継ぎ、入院という流れでした。それぞれの処置が細かく分業されていること、さらにそれぞれに裁量権があるのかそのスピードは凄まじいものでした。日本では医師にしろ看護師にしろ、その業務は多岐にわたりアメリカのような分業は現時点では困難ですが、今回このようなシステムに触れられて大変刺激的でした。

Family Medicine

 Family Medicineは、日本で言う開業医と一般内科医を合わせたような業務をこなしていました。大学病院から20分程度離れたところにあるFamily Health Centerという施設で外来を行い、入院や精査が必要と判断した場合に大学病院への受診を促し、治療を行うという流れでした。ここでも分業がしっかり行われています。 Family Health Centerにある診察器具といえば、身体所見のための眼底鏡や耳鏡、採血検査、レントゲン、心電図程度です。日本の開業医に一般的な内視鏡やエコーすらないのです。そういった検査に頼らないためか、問診や身体所見に大変時間を割いていました。定期通院している患者さんにでさえ最低30分はかけており、初診に至っては診察に1時間以上を要していました。もちろん細かい検査はできないため、それ以上になるとMCCG(Medical Center of Central Georgia)で精査をされていました。
 MCCGに入院すると、Family Health Centerで診ていたDrが主治医となり、検査や治療計画をたてていきます。外来から入院まで同じDrが診ていくのは、日本と同様だと感じました。入院した後は、メンバーによって行われる毎日のカンファレンスと回診を通して、治療方針を皆で共有していました。その日、MCCGにいるメンバー全員で全患者を診察し、研修医や学生に治療法について指導するシーンもありました。午前中に行われる毎日のカンファ・回診をみて、素晴らしい教育システムだと感じると同時に、医師数、患者数の違いから日本では実現が難しいとも感じました。アメリカの医師が診る患者数は日本とは格段に違いました。私が見学していた期間、Family Health Centerでは初診・再診を合わせても、一人の医師が診察する患者数は1日に10人程度でした。一方、日本では午前中だけでも30人、40人というように大勢の患者さんが来院されます。このような患者数の違いは治療費の違いから生まれてくるのではないかと考え、日本の保険制度の恩恵を感じた瞬間でもありました。

腎臓内科

 数日だけでしたが腎臓内科でもお世話になり、入院中の透析患者さんと病院外の透析センターを見学させていただきました。アメリカの透析事情で驚いたことは、患者さんの透析までの経過です。その一つが腎硬化症であれ糖尿病性腎症であれ、慢性腎不全の患者さんがお金が無いため治療を受けられず、ただひたすら透析状態になっていくのを待っているということです。幸い一旦透析導入されれば補助のおかげで無料で透析を受けられるとのことですが、日本では透析にならないために服薬治療していますが、そのお金さえないのです。また患者さんのコンプライアンスの悪さにも驚かされました。日本では基本的には週3回1回4時間以上の透析療法を受けますが、アメリカの患者さんの中では1時間もすると帰りたがるとのことです。その理由を先生に尋ねて見たところ「アメリカは自由の国だから自分のしたいようにするのさ。」といった返答が帰ってきました。先生がおっしゃるように常に自分の選んだ道を進んでいるためか、自分の生き方に後悔しているような方を見ることはありませんでした。しかし、そのことは透析という面においては必ずしも良い結果に繋がっているとは思えません。以前から日本の透析成果がアメリカと比較して優れていると言われていますが、それは日本人の規則を守る性格に伴うものが多いのかもしれません。

アメリカ生活

 一ヶ月の滞在で多くの方々と触れ合うことができ、大変刺激的な日々でした。アメリカの人々は何と言っても気さくな方が多いです。全く知らない人でも目が合えば素敵な笑顔とともに「Hi! How are you?」と挨拶を交わします。私が自己紹介をすると、「日本のどこから来たんだ?」「黒部ってのは日本のどの辺り?」「私も日本に行ったことあるよ!」と言ったように矢継ぎ早に質問を投げかけて興味を示してくれます。彼らとお互いの文化について話し合ったことも有意義な時間でした。他国の文化に触れることで自国の文化を改めて見直す機会にもなり、そういった意味でも貴重な経験となりました。

 出発前は様々な不安もありましたが、振り返ってみると毎日が新鮮で、全てが輝いていた日々でした。この一ヶ月間の経験は私の人生にとって大きな財産となると思います。最後になりましたが改めて、今回の留学のためにご尽力していただいた皆様方に感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!


 
Dr. Blackwoodと(左)、Dr. Rocheのお宅にて(右)

 
ERのドクターと

黒部市民病院

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