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河野達彦医師

平成25年10月6日-平成25年11月4日  

 私は2013年10月6日から11月4日まで、アメリカ合衆国ジョージア州メーコン市にある中央ジョージア医療センター(The Medical Center of Central Georgia: MCCG)にて、救急外来(ER)を1週間、感染症内科を3週間見学させて頂きました。

 第一陣として、先生方とともに総勢7名でアメリカへ出発しました。成田空港からの、約12時間のうんざりするほどのロングフライトを終え、アトランタ国際空港に到着するとまず待ち構えていたのが入国審査でした。メーコン市に1ヵ月間滞在すると言うと、観光地でもないのに何をするのだと、強面で無愛想な入国審査官に非常に怪しまれました。アメリカの入国審査は特に厳しいらしく、英語で予想以上の質問攻めに遭い、1ヵ月の滞在の中でこの時が一番緊張したように思います。今年は幸い皆比較的スムースに審査を通ることができたようです。
 メーコン市はアトランタ市からハイウェイで約1時間半ほど南下した場所にあり、緯度としては日本の鹿児島県と同じくらいのところにあります。気候は、滞在中はあまり雨は降らず、やや乾燥気味、日中は日差しが強く暑いくらいでしたが、内陸に位置するためか朝晩はかなり冷え込みました。
 宿泊先のResidence InnからMCCGまでは車で20分弱ほどの距離で、渡米前に国際運転免許証を取得し、レンタカーを借りて毎日運転して通いました。左ハンドル・右側走行の運転は、最初は逆走しそうで怖かったですが、意外とすぐに慣れました。
 MCCGは病床数で言うと約600床ほどで、ジョージア州で2番目に大きな病院です。黒部市民病院の414床と比べると大差ないのではないかと思いがちですが、予想をはるかに上回る巨大な病院でした。保険制度の関係上、アメリカでは膨大な医療費を請求されるため、本当に必要な人しか入院していません。黒部市民病院の平均入院日数が約14日であるのに対し、MCCGは約4日です。診療内容は非常に濃いもので、あくまで印象としてですが、黒部の集中治療室がMCCGでの一般病棟、黒部の一般病棟がMCCGでの退院・外来通院といった感じでしょうか。高額な医療費で多くのマンパワーを得ており、総職員数は約5000人、医師数もレジデントを含めて約400人と言っていました。そのような大病院で1ヵ月間研修させて頂きました。

ER

 ERには救急医が20人以上在籍し、シフト制によって日中は3人、夜間は2人で診療にあたっているようです。救急医は、患者さんのいる診察室に問診・身体所見をとりにいき、その後コンピューターのある部屋で入力作業をするということを繰り返しており、その救急医の後ろをひたすらついて回って見学をしていました。
 やはり施設の規模の大きさとマンパワーの違いは感じずにはいられませんでした。ERだけで約50床ほどの個室があり、1日に軽症から重症まで約150人の患者が受診しているそうです。救急医2,3人だけでどうやって回すのだろうと思っていたら、他にも多くのスタッフが働いていました。看護師の他にPA(Physician Assistant:一通り診察・検査を行い、救急医にコンサルトし処方する。私たち研修医が救急でしている業務と似ている)、NP(Nurse Practitioner : PAと同様の業務、簡単な検査・処方をできる看護師)など、日本には存在しない多くの職種が活躍していました。レジデントや医学生も上級医にコンサルトする形で診療していました。蘇生可能と思われる心肺停止患者が搬送された時には一瞬にしてスタッフが10人以上集まって対応しており、人手の多さには羨ましく感じました。
 診療内容としては、問診を行い、それに対し身体診察、必要な検査をオーダーするという流れで、基本的には普段黒部でやっていることとあまり変わらないように感じましたが、検査に関してはかなり網羅的に行われていた気がします。患者さんが受診する理由も、胸が痛いと言って受診する高齢者、頭をぶつけて受診する子供、めまいがとまらなくてつらいなど、黒部で見たことのある光景が多かったように思います。日本のように明らかに風邪で受診する人はいないようでしたが、アメリカでも緊急性がないにも関わらず救急外来を受診するケースが多いようでした。その理由は日本とは異なっており、アメリカにおいては、救急外来では保険をもっていない患者でも診なければいけないという決まりがあるらしく、専門科を受診できない生活困窮者がそれを利用して多く受診すると言って嘆いていました。
 特徴的だと感じたのはDrug user、肥満者が多いことです。「Drug userが多いですね」と救急医に言うと、「Welcome to America!」と言われました。それだけDrug userが多いので、話している様子が変、眠たそうにしているなど、様子がおかしい場合は閾値を低くスクリーニングを行っているそうです。肥満に関しては、想像以上に重度の肥満者が多く、静脈ルートを確保するにも相当苦労していました。CPAで搬送されてきた重度の肥満者には、最初から静脈からのルート確保をせず、ドリルのようなもので脛骨に穴をあけて骨髄路を確保していました。初めて見たというと、アメリカではかなり一般的だよと言われました。

感染症

 2週目以降は以前黒部市民病院に訪問されたことのあるDr.カートナー、Dr.クマール、MCCG新任のDr.ポンセのもとを中心に、感染症内科にて研修をさせて頂きました。
 感染症内科は、感染症病棟をもっているわけではなく、一筋縄ではいかない症例に関して各科からコンサルトを受けて各病棟に診察に行き、感染症の治療をしていくというものでした。たとえば、HIV感染者である場合や、抗菌薬に対して治療抵抗性の場合などです。
 先生方にはいろいろなことを教えて頂いたり、何か質問はないか、他にみたいものはないかなど気にかけてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。特にDr.カートナーは、マーサー大学にてベストティーチャーに選ばれたことのある人気者であり、彼のもとで研修させていただき、非常に良い経験となりました。どんなに忙しくても必ずフィードバックや+αの説明をしてくださりました。また、Hope centerという政府が運営しているHIV患者の外来通院しているクリニックでは、一人で簡単な問診や身体診察をさせていただき、非常に良い経験となりました。
 感染症科をローテートしているレジデントにもつかせてもらったり、医学生と一緒に研修することもできました。アメリカの医師は、4年間の通常の大学を卒業後さらに4年間メディカルスクールに通い、その後レジデントとして各診療科のトレーニングを受けます。レジデントの期間は内科(internal medicine)は3年、外科(general surgery)は5年など診療科によって異なるようです。一方、現在の日本の制度では6年間大学に通い、その後2年間研修医としていろいろな科をローテート、医師3年目になるときに専門科を決めることが多いです。アメリカの医学生の3,4年生が日本の研修医に相当するといった感じでしょうか。同世代の異国の医師・医学生が診療している姿をみて、非常に刺激を受けました。レジデントは5人ほどの入院患者を受け持ち、実際にベッドサイドに問診・診察に行き、カルテを記載、その後必ず上級医からフィードバックをもらっていました。昼食の時間帯には指導医によるレクチャーがあり、教育システムもかなり充実していると感じました。

休日・他

 週末にはアトランタ、ラスベガス・グランドキャニオン、ニューヨークなどに観光に行きました。グランドキャニオンは10月の最初の2週間は国立公園が急にshut downされてしまい、行けなくなるのではないかという危機でしたが、幸運にも直前に解除され、無事観光することができました。平日の夜は以前黒部に来られたことのある先生にディナーに招いて頂いたり、まさに本場のハロウィンパーティーに参加させて頂いたり、非常に楽しい時を過ごすことができました。

 帰国して筆を執っている今思い返すと、特に問題を起こすことなく帰ってくることができた安堵感とともに、この1ヵ月間はとても楽しく充実した貴重な経験であったと感じています。研修によって何かしらの知識や能力が急激に増えたわけではありませんが、今回の米国研修でしかできない経験をしたことで何か目に見えない形で今後の人生の糧になると信じています。
 最後になりますが、今回米国研修という貴重な機会を与えて下さった黒部市民病院、中央ジョージア医療センター、援助してくださっているYKKの方々をはじめ、すべての関係者の皆様に深く御礼申し上げます。

 
MCCG正面玄関 (左)、ER外来にて(右)

 
エンパイヤーステイトビルからの夜景 (左)、感染症科のDr. KatnerとDr. Ponce (右)

 
グランドキャニオンにて (上)

黒部市民病院

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