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柴田修太郎医師

平成23年10月15日-平成23年11月14日

米国研修雑感

2011年10月中旬から4週間、アメリカ東海岸、ジョージア州メーコン・中央ジョージア医療センターを中心に家庭医学の領域の見学をさせて頂いた。
1週目がIn-patient(家庭医学の病棟)、2・4週目が救急外来、3週目がFamily Health Center(クリニック)というプログラムであったが、以下思いつくままに雑感を記す。まとまりに欠け、やや冗長になっている部分もあるが、何卒ご容赦頂きたい。

全体の印象

病院の規模が大きく、スタッフが多い。
スタッフ同士はやたら仲良く、職種関係なしの挨拶・ハグ・拳を合わせる等の光景が病 院中至る所で見られる。仕事中も概ね楽しそうで、怒っている人はほとんど見かけない(救急外来では口笛を吹いたり、鼻歌を歌ったりしている人までいる)。 しかし、レジデントの部屋の標語?に「No more Admissions Please」と貼ってあったので、彼らが特別に仕事好きかというと、そういうわけでもなさそうだ。単細胞な私ははじめたんに米国人のキャラクターってスゴい...と思っていたのだが、時間が経つにつれマンパワーの違い(仕事の余裕)という因子が大きいことに気付いた。
また、人種の多様さにはアメリカという国の本質を見る思いがした。特にメーコンではアフリカ系アメリカ人の多さが目立つ。表立った人種差別は見えてこないが、やはりグループのようなものはあるかもしれない(学生時代の女子の派閥を思い浮かべるのが一番近いかも)。
冒頭の病院の規模の件と関係しているのだろうが、私が見た限りすべて個室管理で、木のドアで仕切られており、プライバシーに対する意識の違いを感じた。
さらに、職種を問わず、仕事中常に飲み食いを続けており、これではこの肥満ぶりもさもありなん、と感じた。

In-patient

家庭医学が病棟を持っており、午前中は上級医・レジデント・医学生のチームで病棟回診を行う。朝7時半からプレゼンがあり、レジデントまたは医学生が簡潔に症例提示していく。ラウンド中は上級医が主に患者 さんを診察し、その場で教育的な指導が行われる。午後は救急に来た新患の対応や再度レジデント・医学生のみでの回診を行う。日本の学生自体の病院実習に近 いが、日本より教育システムがしっかりしているように思われた。単に知識を問うたり、あるいは知識がないからと責められたりするシーンは全くなく、指導の 内容もなかなかのレベル。もっとも、日本とは医学制度が違う(こちらの研修医が米国での医学生に当たる)ことも考慮せねばなるまい。余談ながら、滞在中、 頻繁に日本でどういう立場にあるのかを聞かれたが(津波の話と同等によく聞かれた)これを説明するのに苦慮した(ライセンスがあるが、スペシャリティがな いというとやや怪訝な顔をされる)。米国では卒後すぐ専門を決め、その専門科の決められた年限を終えると漸く一人前の医者とみなされるそうだ。そのため、 米国のレジデントは総じて私よりも年上風だった。

救急外来

精神科、小児科、胸痛、外傷等部屋が割り当てられており、それらはレベル(緊急度) 別に区画が分かれている。部屋の数は黒部と比べものにならないほど多い(数十区画はありそう)トリアージ専門のナースがいて、これらの部屋分けをしている そうだ。患者情報は救急外来内に数箇所ある電光掲示板に表示され、担当医師やナースのほか、やるべきオーダー等も表示されている。
医師以外にPA(フィジシャンズアシスタント、黒部の救急でいうところの研修医か。ただしナートはしない模様)さん、NP(ナースプラクティショナー、専門的な知識を持ったナース?手技も日本のナースよりいろいろやる権限が与えられているよう)さん等実に様々な職種の方が活躍している。
電子カルテ上に音声認識装置が組み込まれていて、多くのドクターがそれを利用してい る。さまざまな発音の方がいるが、かなり正確に拾えるようだ(日本ではこれは実現困難であろう。平仮名、カタカナ、漢字、アルファベットと表記の手段が多 く、意図通りに入力されない可能性が高い。アルファベットのみの英語だからこそ実現しているのか)
救急で来た骨折にモルヒネ+Zofran(オンダンセトロン、日本だと化学療法の際に使用)を使用しているあたり、お国柄の違いを感じた。

医師の勤務はシフト性になっており、皆ばらばらの時間に来て、きっかり8時間で帰って行く。この点も日本と大きく異なるが、マンパワーのなせる業だろうか。これを見ていると、日本の1日働く→当直する→また次の日も働くというのはかなりクレイジーな勤務に思える。患者さんに立場からしても当直明けの医師に診察してもらうのは出来れば避けたいのではないだろうか(他の業種も同様、例えば当直明けのパイロットの操縦する航空機には乗りたくないのが自然だと思う)

Family Health Center

家庭医学のクリニックであり、レジデントや上級医がバイトとして勤務に来ている。特筆すべきは、1人に相当の時間をかけて診察していること。まずはスチューデントドクターがあらかた診察し、その後上級医が 再度診察する、という流れが多い。そのフィードバックもしっかりしている。問診は、レビューシステムを使用したものであり、主訴と全く関係なさそうな質問 が続くこともある。見落としが減るという反面、これは時間がある環境下でしか許されないやり方だろうと思われた(日本の外来で同じ事をやろうとすると、当 然回らないだろう)
ご家族も同席の上で、診察することもあるが、思春期の女の子には一人にして質問する等の配慮もあった(ただしかなりえげつない...日本ではなかなか聞けないと思われるような内容もバンバン聞いていた)ご家族・患者さんの小さな疑問にも丁寧に回答している様子が印象的だった。
患者さんの疾患は慢性疾患が多く、高血圧、糖尿病、脂質異常症等々日本と同じような傾向あり。しかし、肥満の割合が多く、しかもそのBMIが突き抜けているという事実は見逃ない。インスリン分泌能がそれだけ高いということだろうか。(BMI50の方の診察が終わった後、私が体重計に乗ったら、その方の体重の1/3しかなく、食べてる?といわれてしまった)
また、ある日はマーサー大学医学部キャンパスに行き、医学生相手のナートの講義に出 席した。私も実際に豚のナートをしたのだが、初めてナートする学生に比べれば私に一日の長があるのは当然のことで、教官曰く「ビューティフル!」「ヒーイ ズパーフェクト!」渡米期間中唯一の賞賛を浴びた。縫合の目的、種類、コツなどを丁寧に講義している様子が印象的で、アメリカ医学教育の一端に触れられ、 面白かった。

その他、文化等

ちょうど訪米の時期は寒く、特に朝夕はかなりの冷え込みで車の窓に霜が降り、部屋で は暖房をつけていたほどだった。季節はまだ晩秋にもかかわらず、早くもショッピングモールではクリスマス関連の商品が所狭しと置かれており、クリスマスが 日本以上の一大フェスティバルであることが伺えた。

空いた時間に本屋にしばしば遊びに行ったが、本屋にも関わらずボードゲーム・カー ドゲームが大量に並べられており、日本と違い海外ではまだまだアナログゲームが生きていると実感した。中でも、モノポリーは通常のクラシックなスタイルに 加えてビートルズ・任天堂・ハリーポッター・コカコーラ等様々なバージョンがあり、やはりアメリカではモノポリーがボードゲームの王様!と感じた。(マク ドナルドでもチケットを集めて一攫千金を狙うモノポリー様の懸賞が開催されていた)
また、医学生さんとオーケストラを聞きに行ったのだが、無名な地元のごく小規模なオケにも関わらず、(プロだから当然だが)かなりのレベルで感動した。客の印象としては、正装している方がほとんどで(2階席はジーパンの方もちらほらいたが)また年配の方が多かった。始まる前にオーナー?が後援の方?の紹介を するのも日本には定着してない習慣だと感じた(米国では企業がオケ等の文化事業に寄付すると、その分の税金が控除される制度があると聞いたことがあるが、 それと関係しているのか。チケットの値段も日本でプロオケを聴くより安いようだ)
その他にも、週末はアトランタ、ラスベガス・グランドキャニオン、サバンナ等の観光を楽しませて頂いた。移動の際に見た美しい並木道、紅葉や砂漠地帯が日本にはまずない風景で印象的だった。

まとめ

これまで海外での生活どころか渡航経験すらない私にとって出発前は大きな不安があったが、かなり楽しく過ごすことが出来、有意義な体験となった。
個々の薬や治療法に関しても日本とは異なる点があり面白かったが、私は一番大きな違 いは保険制度ではないかと感じた。上記に何度も記したように、マンパワーの違いは至る所で感じたが、これは詰まるところ資金面に余裕があるからそうなるの であって、お金のある人から高額な保険料を取って成立している医療だと思う。分業がかなり進んでいる(科毎、職種毎)ことも印象的だったが、これも保険制 度の違いのなせる業ではないだろうか。日本の医療は国民皆保険制度のもとでよくやりくりしていると思う。これは、どちらが優れているという話ではなく、国 民性・考え方の違いだと感じた。
また、教育面での充実は特筆に価する。どの場面においても上級医・レジデント間での教育は非常に素晴らしかったし、医学教育もよく練られている印象があった。日本では個々人の置かれている環境によりレベルがまちまちだと思う。このあたりも意識の違いかもしれない。

最後になりましたが、貴重な米国研修の機会を与えて下さった黒部市民病院、中央ジョージア医療センター、その他全ての関係者の方々に心から感謝申し上げます。本当に有難うございました。今後の交流事業の益々の御発展をお祈り申し上げます。

 
AtlantaのWorld of Coca-Colaにて(左)、Macon Symphony Orchestra(右)
 
Mercer University構内にて(左)、救急外来入口(右)
 
事務のアンさんと(左)、新設した心臓センター(右)

黒部市民病院

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