本文へジャンプ

岡部佳孝医師

平成22年10月2日~10月31日

海外研修を終えて

まずは米国研修の機会を下さった黒部市民病院の皆さんに、援助して下さっているYKKの方々、医療交流を継続し発展に労を割いてくださる方々に感謝の言葉を申し上げます。交流の礎を築いた方々、実際に事業継続に携わった先輩方の努力を糧に、精神に異常を来たす事も無く、無事に再び黒部の土を踏む事が出来ました。

いままでたくさんの先輩方が参加され貴重な手記を残されている。医学的な見地で私が今更語って有益な事などなさそうです。そこでここでは、私なりにこれから医療交流を通して黒部で研修する研修医に参考になるような話をしたいと思います。

MCCG(Medical Center of Central Georgia)からは医療交流により年3回先生方が黒部市民病院に来院され、日本の医療を体験される。私たち研修医はこの先生方に時間を割いて学を授けて頂くのですが、かれこれ10年以上は英語を勉強してきた(曲りなりにも医者であるので人一倍の自負 はある)筈なのですが、まったく英語が通用しない。ここでいくら本を読んでも、英語は身に付かぬ事を痛感します。(考えても見れば、非英語圏での英語教育 など畳の上で水泳を習うような事であったのだと思う。現に向こうでは5歳の時分には英語はペラペラです)黒部の研修医のあらかたは、海を渡ってきたnative達により英語による波状攻撃を受け、善戦虚しく、往々にして沈黙という敗北に行き着きます。この体験を糧に、さぁ米国で1ヶ月研修しようというのだから、心は平穏ではいられません。更には向こ うは銃社会であります。唯でさえ屈強な体を持ち合わせているのに。鬼が金棒を持っていても木っ端微塵になるような連中がわんさかといる世界に、丸腰で挑も うというのです。無謀であると言わざるを得ません。言葉の壁も厚いのですが、文化の違う社会に身一つで飛び出すのは非常に勇気のいることであります。

大方の研修医は不安を胸に抱きつつ米国に行くのです。13時間に及ぶフライトを終え、満身創痍で空港に着いた瞬間、異国に迷い込んでしまったと痛感します。右も左も所謂イケメン高身長ばかりで 日本での上位言語である英語を流暢に使っています。日本にあってもやはりイケメンたちの中にあってはいささか緊張致します。しかしここではもはや恐怖で す。この先どんな苦難が待っているのか心配になってしまいます。突いた矢先にこれからの自分の人生が走馬灯のように思い起こされました。

私にとって幸いだったのが、同じ時期にもう二人年の近い友人に居た事でした。二人は旅慣れていたこともあり、非常に頼もしく思いまし た。ちょっとした事が億劫になってしまいトイレ一つ探すのも日と苦労だったのですが、友人たちのおかげで日常に生活にはなんら支障を感じませんでした。も し一人だったならば、とてもうまくやっていく自信はないです。私はここでジョン万次郎が如何に偉大であったかも実感できたのであります。

いざ、病院での研修となりますと面食らうのが、native達の会話の速さです。こっちは赤子のような英語力であるということを忘れているようです。日本にいてはまず聞かない抑揚、発音にまった く歯が立ちません。気を使ってゆっくりしゃべってくれる方もいますが、大体最初だけでそのうち普通に語りかけてきます。向こうではスマートフォンが流行っ ており、wifiもあらゆる施設に完備されている為、分からないこともスマートフォン越 しに意思疎通が図れるため非常に役に立ちました。特に医療従事者の所有率は高く、辞書やメモに用いており、良いツールでした。研修の際は、コミュニケー ションツールとしてはもちろん、翻訳機、辞書、カーナビ代わりにもなるので持っておいて損はないです。お勧め度は☆5つほどでしょうか。

不安ばかりでどうしようもなかった自分ですが、現地の人達のフレンドリーさには驚かされました。とにかく皆親しげに接してくれます。飲 食店やスーパーの店員だけでなく、病院内であっても患者との会話はフレンドリーです。ほぼ談笑みたいな外来も見学しました。日本だとコーラを飲みながら、 診察とかすると人によってはなんて無礼なスタッフなのだとクレームや投書があるかもしれません。だらけていると感じる人もいるかもしれません。日本人は礼 儀正しくきれい好きと言われますが、海外から比べると神経質なだけなのかもしれません。こういったところが日本のストレス社会の一因となっているのではと も思えました。ただ空港のスタッフは態度が悪いので気をつけて下さい。

MCCGはジョージア州で2番目の大きさを誇る病院と言うこともあり、救急スタッフも大勢居られます。黒部市民より規模が大きく、救急のシステムも異なっています。業種も細分化されており、日本とは裁量権も違う為に、学べるところが多いと思います。1週間で日中での見学が主なので、銃による外傷等の夜間に発生しやすいア メリカ特有の症例はあまり見かけないかもしれません。だいたい受診される患者の主訴、緊急度の割合は日本と変わらない印象でした。ただ薬物やHIVの頻度 は段違いなので、これはアメリカで是非積極的にご教授して頂くと良い経験になると思います。

日本でも根拠に基づいた医療が根付いており、海外と比べ医療行為自体 や初期対応には差があまりないのですが、どのスタッフが対応に当たるのか、医療行為に関してのスタッフ間の連携、保険制度は異なる部分が多く面白いところ だと思います。治療に関しても保険の種類が絡むなど病院だけでなく、社会保障の枠組みから根本的な文化の違いを感じることが出来ました。

自分は研修医として学ぶ側として、渡米したわけですが、今後は自分の専門を修め、研鑽を重ね、実力をつけて留学し、双方に有益な交流を目指したいです。

代々受け継がれてきた研修プログラムにより、双方にノウハウが蓄積され研修も成熟してきた感があります。このことにより大きなトラブル もなく、円滑にアメリカでの研修を終えることが出来ました。先代達の努力により非常に快適な研修を受けることが出来たのだと、実感し、感謝しきれないで す。今後もたくさんの研修医の方がアメリカに渡り、笑いあり涙ありの悲喜交々のやり取りがあると思います。さらに黒部市民病院が良い病院である為に、研修 が継続され研修医の良い経験となり、受け継がれることを願っております。このたびの研修の為に尽力された関係者各位には厚く御礼申し上げます。ありがとう ございました。

 
救急にて(左)、お世話になったアルーラさん一家(右)
 
グランドキャニオンにて(左)、みんな大好きバニーちゃん(右)

黒部市民病院

ページトップへ

ディレクトリーナビゲーション