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渕上貴正医師

平成22年9月25日~10月24日

私は第一陣として辻先生、太田看護部長、沢井事務長、池田さん、看護師中平さんとともにアメリカへ出発しました。初めての長期海外滞在とあって不安もありましたが、入国審査で少々手間取った他はおおむね順調にスタートいたしました。

最初の一週間は救急外来を見学しました。ベッドは全室個室で40床、小児ゾーン・胸痛ゾーン・重症者ゾーン・その他というように分かれており、自傷他害の危険がある患者さん向けの特別室(警察官が監視)も用意されていました。Walk in, 救急搬送いずれの患者の場合もトリアージを専門に行う看護師がバイタルや問診状況に応じて重症度判定を行い、軽症の患者はフィジシャンズアシスタント(PA)やナースプラクティショナー(NP)といったコメディカルのスタッフが診療する様式でした。彼らは当院の初期研修医の仕事のような印象がありましたが、PAは3年間の専門学校で資格取得可能ということで、医師を一人養成するよりも効率的でかつ医療経済面(PAの平均年収は約500万円)でも医師不足を打開する政策として有効だと思いました。ERのドクターは3交代制勤務であり、看護師と同じ週3-4日勤務でした。一面の比較にしかなりませんが、週60時間労働もまれではない日本の労働事情を考えると職場としてアメリカは羨ましくも感じられました。ただし患者の立場から考えると平均滞在4-5時間、検査は原則支払いに同意してから施行されるた め支払いできない貧しい人々が受診困難になるなどなどシビアな面もあり、総合的には一長一短というべきでしょうか。夜は今まで黒部に来られた指導医、看護 師をはじめ様々な方々とディナーを共にする毎日で、医療交流プログラムとしての大きさに戸惑いつつも美味しい料理と会話を楽しみました。

日米の医療社会事情を主な焦点としてその違いを知りたかったことからジェネラルな分野である家庭医療(科)を希望していたため、2週 目に入りファミリーヘルスセンターという総合診療所を見学しました。風邪に始まり糖尿病などの生活習慣病、妊婦を含めた健診、大部分のワクチン接種(イン フルエンザは薬局で登録を受けた薬剤師が注射可能)、乳がんやその他手術後などのフォローなど、日本の開業医よりも守備範囲を広げたかかりつけ診療所とし て機能していました。アメリカでは、原則かかりつけ医からの紹介がなければ専門科の診療を受けることができません。例えば変形性関節症のような慢性的な症 状でまず受診するのは家庭医療(科)であり、内服や安静など保存的な治療では不十分となった時点で初めて病院の整形外科に紹介し、手術などを検討されると いった具合です。また医療保険制度も日本と大きく異なりますが、国民が加入する民間保険の一部は家庭医療のみカバーされ被紹介で受診する専門科の診療費用 は対象外というのがあることからもプライマリーケアとしての家庭医療は重要な役割を担っていることが伺えます。この一週間は(ジュニア)レジデントや医学 生、上級医とともにモーニングレクチャーや診療を見学しながら過ごしました。

かわって3週目はジョージア医療センターに戻り、家庭医療の病棟業務を見学しました。同院ではICUなどを除き内科一般入院患者を家庭医療(科)の病棟チームが担当しており、上級医2名+レジデント5名で20名前後の患者の診療にあたっていました。アメリカでは循環器や消化器といった内科は外来診療やカテーテルなど専門治療が主で、入院患者は専門領域にあったICUなどを除き原則家庭医が入院後から退院までの方針を決定するとのことです。ここではレジデントたちはそれぞれ4-5名の入院患者を担当していて、朝6時頃からプレゼンの準備を始め午前中一杯かけて上級医と回診を行い、午後は新規入院患者に随時対応し、夕方には当直のレジデントに申し送りをして終了というのが一日の仕事でした。チームは病棟業務に専念することができ、3週間日勤+1週間の夜勤というシフトを組んでいる点に驚かされました。家庭医療(ジュニア)レジデンシープログラムについて少し触れますが、プログラムは3年間となっていて、まず1年次には日本と同様に外科や産婦人科、小児科などをローテートし2年次以降に入院や外来で総合診療のトレーニングを受けます。3年 間が終了した後そのまま家庭医として働くほかに、さらにスペシャリティーを習得するため後期研修を積む人も多くいます。フェローシップと呼ばれています が、私が出会ったレジデントたちもスポーツ医学や救急医学、代謝内科といった専門を学ぶ予定でした。彼らの研修医室も使用させていただきましたが、全て ベッドやパソコンを含めた個室だったのには感心させられました。

最後の4週目はJennifer Duke先生(平成23年度に黒部に来られる予定)の元、プライベートオフィスで過ごしました。こちらはヘルスセンターよりも規模が小さく、医者4名+ナースプラクティショナー1名+看護師や医療事務の方で構成されていました。パートタイムで働く方がほとんどで、女性ばかりで和気藹々としたオフィスでした。ここでも総合診療所として主に慢性疾患の診療を行う役割を担っていますが、広汎性発達障害の患者の初診を見学した際には2時間以上をかけて家族や本人と面接をする姿がとても丁寧で印象的でした。アメリカでは自閉症などの発達障害を持つ子供達はスロースクールと呼ばれる学校のプログラムを利用し、21歳で卒業したあとはグループホームなどで生活し社会に出て行くことは困難な点が問題だということでした。

以上、簡単ですが4週間の研修を終えての報告とさせていただきます。週 末のアトランタ、フロリダ、ラスベガス観光を含めてとても充実した毎日でした。現地でお世話になった方々はもちろんのこと、このような機会を与えてくだ さった黒部の皆様にも本当に感謝しております。今後の人生にも是非この経験を生かしていきたいと思います。来年度以降もこの国際交流事業がますます盛んに なっていくことを願っております。どうもありがとうございました。

 
Drs.Kitchen & Makiiと(左)、滞在中に使っていた車です(右)

黒部市民病院

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