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中村さやか医師

平成21年10月31日-平成21年11月29日

2009年11月2日から11月25日までThe Medical Center of Central Georgia(MCCG)救急外来(ER)にて1週間、産婦人科(OB/GYN)にて3週間、Central Georgia Cancer Careにて1日研修させていただいた。

ER

ERの概要・スタッフ:

The Medical Center of Central Georgia(MCCG)のER受診者数は年間48992人、1日平均128人である。受診者数は当院救急外来受診者のおよそ2倍にあたる。ER専従医は毎日9人で8時間3交代の勤務であり、常に3人がERに常駐していることになっている。(そのうち 1人はchest pain center専属)さらには、医師にコンサルトしたうえで患者さんの問診や簡単な検査オーダー、処方ができるPA(Physician Assistant)、NP(Nurse Practitioner)が数名いる。重傷者が多いですが、職種も専門分化し人員豊富であるため、切羽詰まった感じはなく、精神的に余裕を持って仕事できているようだという印象をうけた。これでも昨年経費削減のため大規模なリストラが行われた後だそうである。

救急外来の診療システム:
  1. トリアージナースが患者をトリアージ。1(緊急性高い)⇔5(緊急性低い)。
  2. 患者は1~40まである個室に搬入される。ナースがモニターをつけて問診・主訴をカルテに入力する。外傷患者専用、胸痛患者専用、小児専用、そのほか重症患者専用等のゾーンがある。
  3. 患者の部屋と患者情報が電光掲示板に表示されるとともに、ドクターコールがかかる。
    (CPAなどの重症者は救急隊からの連絡が事前にドクターに入るため、搬送後これを待たずにすぐに診察にあたる)レジデント・PAがまず診察することもある。
  4. ドクターが指示を出すと、電光掲示板にアイコンが表示され、進捗状況が随時更新される。
  5. ドクターは、カルテの内容を記載(トランシーバーを通じてしゃべると、dictatorが聞き取って入力する。ドクターはパソコンを打たない)必要があれば、各科にコンサルトして入院させる。
診療の標準化と効率化:

市中肺炎、脳卒中など、commonな疾患には救急対応プロトコール(クリニカルパスのようなもの)が作られている。ナースへの指示、検査内容、点滴内容が一枚の用紙で一括指示できる。脳卒中プロトコールでは、STによる嚥下機能評価の指示まで入っている。

また、患者が帰宅する際に、自宅療養の手引きを全例に渡す。たとえば、高血圧の人の場合、自宅で気をつけるべき生活習慣や内服・出現してきたら救急受診してほしい症状などA4用 紙3枚にわたって記載されている。こういった、マニュアル化された書類・プロトコールが整備されているため、多くの受診者を効率よくかつ迅速に診療するこ とが可能となっており、患者への標準的な医療の提供に寄与している。自宅療養の手引きは同意書も兼ねており、患者のサインをもらったうえで帰宅としてい る。患者自身の同意の上で帰宅したという証拠資料というわけであり、訴訟対策という一面もある。

産婦人科のカンファレンスでも、上級医がレジデントに対し、同意書へのサインの取得の必要性を強く指導している場面を見た。カルテに患者の同意を得たと書くだけでは、後に説明された記憶がないなどと言われたら敗訴する可能性があるため、不十分であるとのことであった。

受診者の様子:

マリファナやコカインなどドラッグユーザーが多くみられた。フロリダからジョージア州にかけての東海岸ではコカインが多く流通しているという土地柄が関係している。drug screeningは、意識障害・話す内容が変である・眠たそうにしている、など様子がおかしいと思われる人には閾値を低く行っている。若年者の胸痛では、cocaine chest painを必ず鑑別に入れてdrug screeningを行っていた。ドラッグユーザーの患者を問診している様子を見たが、見慣れない私にはどこがおかしいのかわからなかった。ERの常連は、アメリカ存在にもしており、私が見たのはアルコール中毒で、救急をかかりつけ医のごとく利用する人であった。診察したDrが、「今保険制度を改革が議会で討議されているが、働けるのに働かず、ドラッグやアルコール中毒になって病院にくるような人達の医療費を、税金を増やしてまで払ってやるなんて賛成できない。」と発言していた。TVでは連日アンチ保険制度改革CMが流れているが、民間保険会社とその関係者ならまだしも、一般市民がなぜそこまで反対するのか理解できなかったが、日常的にこのような患者の診療にあたっているとそのような気持にもなるのかもしれないと感じた。

アメリカERの問題点:

ERの電光掲示板には、収容された患者の名前・処置・担当Dr、NS・待ち時間が表示される。その中に、24時間待ち、50時間待ちと表示されている人が数名存在した。入院が決まったものの病棟のベッドが空かないため移動できずにERに残留したまま、各診療科のDrが受け持っている状態の患者であった。MCCGだけでなく、全米各地で問題になっているとのことであった。人工呼吸器装着された患者までERに残留していたのには驚いたが、ERの個室の設備は当院のICU並み、もしくはそれ以上のものであったため、見ていてそれほど違和感を感じることはなかった。

救急診療実体験:

滞在4週目に左腰部の帯状疱疹を発症し、旅行保険の関係でMCCGのERを受診することになってしまった。全く緊急性を要さない症状であるため申し訳ない気持ちでいっぱいであった。トリアージの後、Quick Care Unitと呼ばれる軽傷者専用の外来に通され、PAの診察をうけた。診察から処方まで10分足らずという迅速さであった。処方の説明や、自宅療養の方法については主にナースからの説明であった。処方された錠剤は、長径1.5cmはゆうに超える楕円形であり、飲みにくいことこのうえなかった。ともあれ、貴重な体験実習となった1日であった。

産婦人科

スタッフ・システム教育・レジデント:

MCCGの常勤医で入院患者、手術、レジデント教育の責任者であるAttendant、日本での後期研修医にあたるResident(1年~4年、18名)、個人のクリニックに勤務するprivate practiceと呼ばれる医師が産婦人科診療にあたっている。Private practiceは外来をクリニックで行い、担当患者の分娩はMCCGのfamily birth centerで行い、private practiceのDrと、Residentが立ち会う。private practiceのDrは数名でグループを組んでいて、当番で分娩に立ち会う。

産婦人科病棟は、Family  Birth Centerと呼ばれるゾーンに位置している。

このゾーン内のOB Assesmentと呼ばれる部署では時間外・予約外の14週以降の妊婦の診察をし必要があればそのまま入院させる。陣痛や、切迫早産徴候を始めさまざまな症状の患者が訪れる。14週未満であれば救急外来を受診する。

夜間休日のオンコールはResident 3名(4年目、2-3年目、1年目)とAttendant1名の4人体制。1st callは1年目、ハイリスク妊婦の担当は2-3年目、悪性腫瘍術後患者は4年目が担当する。1年目は上級のレジデントにコンサルトし、入院や分娩の際にはAttendantがコールされる仕組み。

産科:

●妊婦健診・産褥健診

当院の健診と異なるのは、①初期採血で必ずHIVの検査をする②妊婦検診中に出産後の避妊手術についてコンセントをする③乳房触診を行う(乳癌健診として)④Quad screening(染色体異常のスクリーニング)※を勧める⑤早産スクリーニングとしての経膣超音波はルーチンでは行わない⑥必要があればナースによる家庭訪問が行われる⑦胎児エコーは専門の技師が施行するという点である。

②に関しては、妊婦検診中に避妊手術の同意書までとってしまう。アメリカでポピュラーな避妊法はImplant(プロゲステロン製剤を皮下に埋没させる。3年間有効)・IUD・卵管結紮法といった処置が必要なものであることと、メディケアでは妊婦健診・お産と産褥健診、産後6週までの避妊手術がカバーされることがその背景にある。

④Quad screening:染色体異常のスクリーニング(β-hCG, estrogen, AFP, inhibin)。陽性ならば羊水検査を勧める。検査の目的は、両親の心の準備のためという意味合いが大きい。仮に染色体異常がみつかり中絶を希望しても、MCCGでは不可能である。なぜなら、中絶できる期間を過ぎてから検査結果が判明するからである。ジョージア州はカトリック教徒が多く中絶反対派が多い土地柄である。アトランタには中絶できる病院もある。

⑤に関しては、子宮収縮の自覚・破水感・出血など早産徴候があれば内診、CTGモニターを施行し、必要があると判断された場合のみ経膣超音波やfFNチェックを行う(Full Termという検査キットを用い、1時間くらいで結果が判明する)。

⑥切迫早産で自宅安静中、妊娠悪阻の患者などに対し看護師の自宅訪問がオーダーされる。看護師は、CTGモニターの記録、Biophysical profiling scoreの測定(ポータブルエコー持参)、内診、患者教育などを行う。

産褥健診では、頚がん検診、乳癌健診、クラミジア・淋菌チェック、内診をする。

●ハイリスク妊婦外来

月曜午前の外来は高齢妊娠、合併症妊娠などのハイリスク妊婦専門である。

体重200kgの妊婦や、30代にして心筋梗塞既往・心不全合併妊娠、26歳にして既に11経妊など、日本の外来では見たことがないような患者が次々に受診してくることに驚いた。

医師は妊婦の全身管理を行うという立場から、全身の身体診察を行い、血糖値やピークフロー値、
HIVウイルス量などの検査値を必ずカルテに転記していた。一方、胎児エコーは技師が施行するため、結果が記載された書面を見るのみであった。

●分娩

陣痛室兼分娩室は完全個室。

陣発入院した患者さんはCTGモニターを装着されて、常時波形がナースセンターで観察できるようになってる。ローリスクは4時間ごと、ハイリスクは1時間ごとにレジデントが診察している。Nsも内診できるが、ここではトレーニングのためレジデントが行う。ベビーをとりあげるのもレジデントである。アテンダントのDrが監督している。経膣分娩の90%で硬膜外麻酔が入れられており、麻酔科医または麻酔師が施行する。分娩時には、レジデント2人・学生1人・上級医1人・ナース5人と人員がたちどころに集結した。入院期間は、正常分娩なら24時間、帝王切開なら48時間で退院する。

帝王切開を行う手術室は、一般の手術室ではなくFamily Birth Center内にある。MCCGの帝王切開率は30%ほどである。骨盤位は全て、VBACは妊婦当人から希望があった場合で条件を満たす時のみリスクを説明し数枚の同意書にサインをしてもらって施行する。DrのほうからVBACを提案することはない。

●circumcision

産婦人科Drが新生児の亀頭包皮切除(circumcision)を行う。アメリカでは宗教との関連ではなく、衛生上の理由などからの19世紀末から包皮切除が行われるようになった。1998年に小児科学会から包皮切除を推奨しないガイドラインが発表されたが、包皮切除がHIV感染のリスクを低下させるというアフリカ(ケニア、ウガンダ)でのRCTの結果が発表されたこともあり、男児の新生児にはcircumcisionを施行するかどうかについて両親に必ずインフォームドコンセントをとる。希望しない場合のほうが少ないくらいであるとのことであった。

Male circumcision for HIV prevention in men in Rakai, Uganda: a randomised trial. Lancet. 2007 Feb 24;369(9562):657-66. Gray RH, Kigozi G et al.

Male circumcision for HIV prevention in young men in Kisumu, Kenya: a randomised controlled trial. Lancet. 2007 Feb 24;369(9562):643-56. Bailey RC, Moses S et al

婦人科:

指導医のDr.MakiiはUrogynecologyが 専門であり、骨盤内臓器脱の手術を多く手がけている。子宮脱の症例に対し、腹腔鏡補助下膣式子宮全摘後に、前膣壁と後膣壁からメッシュを挿入して弛緩した 靭帯を補強し、膣壁形成をする手術を見学した。メッシュのアンカーを骨盤底筋、靭帯に突き刺して固定するのであるが、筋肉・靭帯を手で触れながらの盲目的 手技であり、熟練を要するものと思われた。メッシュと穿刺針のキット製品を使用していたが、日本ではまだ認可されていないそうである。術後はエストロゲンクリームの局所投与により、膣壁を厚くたもちメッシュの露出を防止する。Dr.Makiiの専門外来は、ほぼ骨盤内臓器脱の患者で占められており、中高年~高齢者が多い。完全個室であり、再診や術後のフォローでも1人あたり20分程度の時間をかけて診察できていた。このように診察時にゆとりがあることと、文化的な相違のためもあるのか、性生活の障害について日本人よりかなりオープンに訴えがあったことに驚いた。

婦人科腫瘍の専門医は、Dr.Eddy である。朝7:30から卵巣癌の手術が2件たて続けにあり、Drの体力に驚いた。1つは顆粒膜細胞腫、2件目は粘液性腺癌と子宮体癌の合併例であった。MCCGでは、産婦人科医は診断と手術を行い、その後の化学療法や放射線治療等の方針はOncologistが決定して施行する。病院によっては、産婦人科医が放射線治療や化学療法の方針決定をする場合もあるそうである。

教育・レジデント:

金曜は、レジデントのための勉強の日と位置づけられている。朝から講義室でレジデントが持ち回りで講義をし たり、ジャーナルクラブがあったりとアカデミックな一日。勉強会は午前中で終了で、金曜午後はレジデントは病院業務は休みである。自由に勉強できるように 設けられた日だそうである。勉強会の合間にレジデントが話し合いをしていたが、その内容が私たちが話しているようなことと似ていた。当直の交代ぎりぎりにERからコンサルトされたらどうするか、休日のオンコールの相談、だれがどのオペに入るかなどといった内容であった。

Central Georgia Cancer Care

化学療法の様子や、Oncologistの診療の様子の見学を希望したところ、上記施設のDr.Hendricksを紹介していただき研修することができた。Central Georgia Cancer Careは血液疾患と、各種腫瘍の診断・治療を行う施設である。外来化学療法はここで施行する。また、clinical trialにも参加している。

Drは、外科や産婦人科などから紹介されてきた患者の治療方針の決定をし、化学療法の施行、放射線治療が必要な場合は放射線科へ紹介する。MCCGの病棟に入院している患者の治療も行っている。化学療法施行中の患者は、system review形式の詳細な問診票に症状の有無を記載し、DrまたはPAの診察をうける。Drは診察と検査データの確認を行い、治療のゴーサインを出す。

外来化学療法室の様子:

ナースは4人~5人おり、1人あたり4-5人/日を受け持つ。全体で20人から30人程度の化学療法がおこなわれる(輸血や、補液のみの場合もある。)ナースは腫瘍に特化しており、患者に投与される薬剤はもちろん各種検査(CT、MRI、心エコー、Oncotype DX※など)の結果や意義をきちんと把握しており、質問にたちどころに回答してくれた。化学療法の手順であるが、ナース2人で指示のDoseを ダブルチェックする。(初回投与時には必ず指示の投与量が正しいかを身長から計算しなおす)ほとんどの患者は鎖骨下静脈のポートが留置されており、ポート への穿刺はナースが行う。化学療法室に併設している薬局から薬剤をもらい、投与する。治療中の患者は、テレビを見たり、本を読んだり、冷蔵庫に置いてある 飲み物を飲んだりとくつろいだ様子であった。抗癌剤初回投与や、シスプラチンを含むレジメン、5-6時間かかるレジメンなど、日本なら入院で行うような治療も外来で施行していた。

患者教育:

Drから抗癌剤治療の方針、スケジュール、副作用などについてのインフォームドコンセントを受けた後、PAとナースがさらに詳細な説明を行う。使用する抗癌剤がもたらす副作用について、副作用防止のために内服する薬について、気をつけてほしい症状についての解説が行われる。解説にはUPMC(University of Pittsburgh Medical Center)のHPから無料でダウンロードできる患者教育用のリーフレット(薬剤別に副作用などが詳しく記載されている)を使用していた。

さらに、発熱などの症状が出現した場合には、自己判断せずにCentral Georgia Cancer Careに電話するように指導する。日中は常勤ナースが対応、夜間・休日はオンコールのDrにメッセージが届けられ、1時間以内にコールバックがあり指示が伝えられるシステムになっている。

※Oncotype DX:米国で遺伝子発現解析を用いた乳がんの予後予測検査として、エストロゲン・レセプター(+)、リンパ節転移(-)のStageIまたはIIの早期浸潤性乳がん患者を対象に実施されている。

手術室

手術室と、これとドア一枚を挟んだ形で待機室・リカバリー室が存在する。

手術患者は、手術前待機室で待っており、ここで硬膜外麻酔をいれることもある。

手術室ナース(外回り)が迎えに行き、待機室で患者確認。患者さんに名前、年齢(生年月日)、手術名を言ってもらう。食事をしていないかを確認して手術室に搬送する。手首のバーコードで認証といったことはしていなかった。

手術機械は、患者入室以前にすでに開けられた形で準備されている。

患者入室後麻酔科医がすぐに麻酔導入する。

タイムアウトは、麻酔導入し、消毒が完了し、今にも手術を始めようかという段階になってから行う。患者確認をした外回りナースが「タイムアウトします。患者名は~~、手術は~~、みなさんいいですねー?」という感じで声かけする。黒部の手順と異なるのは、手術部位のマーキングがない点、タイムアウト時に患者さんが自ら名乗ったり手術名を答えたりはしていなかった点。(タイムアウト以前にEDが入っていたり、寝てしまっていたりしていた)

手術室にはホワイトボードが設置されていて、患者名、アレルギー、術者名、NS名、麻酔科医名、ガーゼカウント、針カウント、糸カウント、などが記載される。

閉創前には、ガーゼカウントのみならず、針、器械すべてのカウントを確認していたが、術後のXP撮影はしていなかった。Drは閉創すると患者さんが麻酔から覚めるまえに退室してご家族への説明に向かっていた。

患者は術後リカバリー室に移動し、1時間ほど観察をされたのち、全身状態に問題がなければ一般病棟に戻る。

余暇の過ごし方

アトランタ観光、ボストン観光と余暇の時間も充実していた。4週目の木曜日・金曜日はThanks Giving Dayと祝日であった。産婦人科指導医のDr.Makiiのご自宅にお招きいただき、ターキーの丸焼き、アップルクリスプ(アップルパイのようなもの)といった伝統的なアメリカ料理をごちそうになった。

考察・感想

ERではスタッフと設備の充実もさることながら、徹底したマニュアル化により効率的かつ標準的な医療が提供できていることが特筆すべき点であると考える。特に病状説明・自宅療養の際の注意点の記載は非常に詳細なものであった。疾患別プロトコルは院内LANに掲載されたものを、自宅療養の手引きはParker Hill Associatesなる企業がHP上で販売しているものをプリントアウトして使用する。

当院にも救急外来マニュアルや一部疾患における自宅療養の手引きは存在するが、紙媒体のみであり新旧のマニュアル・説明書が救急外来に混在している。また、処方や処置に関する情報が口頭でのみ伝えられ、周知がいきわたらないこともある。MCCGの マニュアルのように診療スタッフ全員が容易にアクセス可能で、更新内容の周知が徹底できるシステムは業務の効率化に寄与するものと考える。また、詳細な疾 患別プロトコールは当直医師の専門科にかかわらず迅速に標準的な診療を提供することが可能であり、同時に訴訟対策にもなりうるという点において、救急当直 医が専門外の疾患を診療せざるをえない当院のような医療機関では有用なのではないかと考えた。

ER、OB/GYN、Cacer Care Centerいずれの部署でも共通して印象的だったことは、患者教育・インフォームドコンセントの充実である。OB/GYN、Cacer Care CenterではDrの診察時間が日本よりも長くとられていることに加え、PA・専門ナースよりさらに具体的な内容の説明があることで、治療方針に関する深い理解が得られているようであった。説明を担当したPAが、「治療は私たちDr・PAが 責任を持って安全にできるように施行します。あなたにして欲しいことは、自分の体調に気を配って変調があればすぐに相談することです。」と患者とその家族 に理解と協力を求めていたことが印象的であった。抗癌剤初回投与や副作用が大きい薬剤の投与を外来で行うことに当初は驚いたが、十分な患者・家族の教育が なされ理解と協力が得られていることと、24時間電話相談が可能なサポート体制により可能となっていると分かった。

患者教育やインフォームドコンセントにこれほどの時間と労力を費やす理由は、訴訟 対策という側面もあるが、患者の医療に対する姿勢が主体的なものであるためではないかと考えた。アメリカでは、患者や家族が多かれ少なかれ必ず質問をし、 時には長時間にわたって問答が続くこともあった。また、ERでは薬の処方内容を問われると、多くの 患者や家族は正確な名称を答えることができており、疾患に対する理解が深いものであるように感じた。日本では、これまでの研修で救急外来や各科の病状説明 などの際に「難しいことを聞いてもよく分からないからお任せするしかない」といった発言を聞くことや、救急では処方内容はおろか現在治療中の疾患名すら分 からないといったことはまれではない。しかし、日本では受け身な受診者が未だ少なくないとはいえ、かつてより詳細なインフォームドコンセント・細やかな病 状説明が求められるようになってきている。医師不足の解消は勿論のことであるが、専門的な知識をもったコメディカルが患者教育に積極的に関わることが求め られるのではないかと感じた。

OB/GYNでは多くのハイリスク妊婦や、日本では未認可のデバイスを用いた手術など、普段の研修ではなかなか見ることのできない診療の様子知ることができた。最新鋭の道具や知識を用いてレベルの高い診療が行われていること、18人ものレジデントが互いに協力しあいながら真摯に研修している様子は大変刺激になった。一方で、貧困家庭の妊婦やHIV患者が常に医療費を気にかけながら受診している様子、受診拒否して亡くなった妊婦・違法薬物を常用している妊婦など、アメリカの抱える根深い問題を垣間見る機会もあった。ERは研修のみならず、奇しくも自分が受診することになり、実際にアメリカの医療を実体験することができた。4週間で学んだこと・見たこと、そしてそれから考えさせられたことが、自らの視野を広げてくれたように思う。このような機会を与えてくださった黒部市民病院とMedical Center of Central Georgiaの皆様のご尽力に深く感謝致します。

 
救急外来(左)、ERのドクター達(右)
 
Makii先生ご家族と夕食会て(左)、ボストン美術館にて(右)
 
Makii先生と(左)、ERの診察室(右)

黒部市民病院

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