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千葉浩輝医師

平成20年10月4日-平成20年11月2

2008年10月4日~11月2日の間、アメリカ合衆国ジョージア州、メーコン市にある中央ジョージア医療センターと附属の小児病院で研修させていただきました。到着まではやはり緊張し、米国の先生方に話は聞いていたものの、期待の中にも多くの不安を抱えた出発となりました。アトランタ空港の入国審査では4週間もの間、観光ではなくしかも日本人のほとんどいないメーコンに行くということで、とても怪しまれました。アトランタ空港からメーコンまでは心細い中高速バスで揺られること1時間半、第一陣の山田先生・岩井さん・川端さんと会えたときは正直ホッとしたものでした。

現地に着いてみると、今まで黒部へ来ていただいていた米国の先生方に聞いた通り、メーコン市は自然にも恵まれ、湿気や涼しさもあり気候が北陸と似ている地域であるという印象でした。また紅葉の始まるシーズンでもあり、木々の葉が染まる様子を見ながら、秋を感じつつ研修をすることができました。宿舎は長期滞在型のホテルであり、調理器具やコインランドリー、アイロン等の設備がありましたし、夕食は主にホテルで出されるサラダとクラッカーといった軽食と近くのスーパーで買う冷凍食品が主であり、あまり不自由なく過ごすことができました。ホテルから病院までは10km程の距離があり、移動はレンタカーを使用しました。また4週間を通じて、黒部に来て下さった米国の先生方に夕食に招待していただくこともあり、楽しい時を過ごすことができました。

自分は1週間はオリエンテーションと救急科、そのほか2週間は小児科、1週間は研修医の草山先生とシカゴでのACEPという救急医療に従事するスタッフの集まる学会へ行き研修させていただきました。

救急では残念ながら銃創や麻薬中毒等は見られなかったものの看護師、救急救命士、医師の仕事の日本との違いに驚きました。救急救命士は鑑別診断もそれなりに把握しているようで、救急室に入ってからも短時間は初期の治療に参加するスタイルであり、発見時の意識レベルや状況、身体所見等の報告も日本とは比べられないほど詳細なものでした。また看護師も挿管したり軽い問診をしたり等、日本に比べて多くの種類の手技を扱っていました。医師は主に診察、鑑別診断、検査メニューの決定が主であり、その分、多くの患者を同時にテンポよく診察していきました。中央ジョージア医療センターの電子カルテは紙カルテからの移行期であり、一部パソコンへの打ち込みですが、カルテの大部分は音声に録音し、タイピストに後で打ち直してもらうというものであり、効率の面を考えれば画期的であるように思えました。患者は40個程もあるベッドのある個室に待機しており、医師が行き、問診診察をしていくというスタイルであり、日本での「診察室に医師が居て患者が入ってくる」というものとは異なっていました。また、1時間程で帰宅となる患者もいれば、20時間以上も様子を見られている患者もおり、その点では1泊入院の扱いを外来で行っているようなスタイルであり日本の病院に比べて入院患者やベッドの数が少ないという点にも納得がいきました。

続いて小児科では、午前は講義に始まり、新生児室・小児科病棟・小児集中治療室・新生児集中治療室、午後は病院前の道を挟んであるチルドレンズヘルスケアセンターの小児外来で研修させていただきました。新生児室では主に健康な新生児を扱っており、日本と大きな違いはありませんでした。ただ、生まれた直後にB型肝炎ワクチンとビタミンKを筋肉注射している点は日本と異なっており、そのほかのワクチンについても違いがありました。  小児病棟では全て個室であり、喘息や肺炎、気管支炎、また重度の先天性疾患の患者が入院していました。鎌状赤血球症というアフリカンアメリカンに多い疾患も初めてみることができました。小児集中治療室では挿管管理の患者が多く、主に呼吸器疾患の子供が占めていました。新生児集中治療室では40床ものベッドがあり、24床が主に重症の低出生体重児で占められていました。

アメリカの平均在院日数は大人では医療費の関係もあり、日本に比べて少ないとのことですが、小児科での平均在院日数は3~4日であり、入院の基準も日本と大きく変わっているとは感じられませんでした。大きな違いとしては、アメリカでは重大な障害の残る先天性疾患の多くは、日本と違い積極的な治療は行わない方針であり、宗教感や社会、経済的環境の違いなのでしょうか?現地の先生に、「日本では積極的に治療する」ということを伝えると、感心しているようでした。またアメリカの小児科では0~18歳まで扱うとのことで(日本の15歳までと異なり)月経不順の子に対してホルモン剤を投与したり、小学生での性感染症を扱ったりと、扱う年齢、文化の異なることは医療にもこんなに影響しているものなのか?と考えさせられました。ただ、子供の可愛さ・笑顔は世界共通でした。

感心した点(羨ましいと思った点)は診察時間に余裕があり、鑑別診断にも多くの時間を割けることでより良い診療ができているという点、当直後翌日の午後は必ず休み、昼の休み時間は毎日といっていいほどにランチを食べながら医師同士で1時間は勉強する会があるということ・・・つまりは時間的余裕があり、勉強や鑑別診断を行う時間が多いことで、良い医療を提供できるとともに良い医師に成長できる環境にあるということです。  羨ましくない点といえば、分野や仕事が細分化されすぎており、エコーやいくつかの主義は医師が行わないことであり、自分で検査し鑑別していく姿勢という点では、日本の医師の方が好ましいように思えました。

最後の1週間はシカゴでの救急学会に参加してきました。シカゴという町は映画スパイダーマンの活躍できるようなイメージの高層ビルの乱立する街であり、路地裏は危険な香りがし、決して治安の良い場所であるとはいえませんでした。学会自体は北の湖(5大湖)に面したマコーミックプレイスという所で行われ、ここは成田空港か?と思うほどに大きな施設で行われていました。多くの部屋でスクリーンに投影する形で様々な救急に関する講義が行われ、朝からレクチャーやポスター等を見て周り、海外の学会というものを身を持って知ることができました。

全体を通して言えることは、自分の視野が大きく広がりこれからの仕事・人生の大きな礎になりましたし、米国研修へ行く以前のアメリカのERはどんなところ?アメリカの医療は良い?という疑問も、直に感じることで解決しました。黒部市民病院は米国に負けていない!と言えます。  この米国研修は黒部市民病院ならびに中央ジョージア医療センターの皆様の御尽力があってこそ成り立っているものであり大変感謝しております。貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。また、この文章を読んで下さった方、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 
小児科外来でクラーク先生方(左)、小児科病棟でレジデントと(右)
 
バートナー先生ファミリーと(左)、カートナー先生ご夫妻と(右)
 
ホテル前で(左)、Dr.Griffinご夫妻と(右)

黒部市民病院

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